勝敗を分ける250万のムスリム票の行方、激戦州ミシガンには「8万2000人以上のレバノン系米国人」
どちらの党もムスリムの票を取り込みたい
ムグニはバイデンを支持していたが、今はハリスが「無差別攻撃」を黙認し、全米で60万を超えるレバノン系米国人の思いを踏みにじっていると非難する。「それが許せない。だから大量破壊兵器で私の故郷を荒廃させる政権には反対票を投じる」。ムグニは本誌にそう語った。 ムグニは無所属のコーネル・ウェストに票を入れたという。ウェストは親パレスチナの反戦派で、政治情報サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、支持率は1%に満たない。当選の確率はゼロに近いが、「それでも自分の声を届けることが大事だ」とムグニは言った。 ミシガン州にはカリフォルニア州に次ぐ8万2000人以上のレバノン系米国人が暮らす。 国勢調査によると、ディアボーン市のあるウェイン郡は中東・北アフリカ出身者の割合が7.8%と、全米の郡の中で最も高い。4年前、バイデンはミシガン州を15万4000票以上の差で制した。 しかし今は、みんなが自分の故郷もガザと同じように破壊されてしまうのかと心配している時期だ、とムグニは言う。 「どちらの党もアラブ系の、ムスリムの票を取り込みたい。だからこそ私は抗議の一票で自分たちの存在を示したかった。そうすれば、次の選挙ではもっと私たちの声を聞いてくれるかもしれない」とムグニは言う。「それで何かが変わればいい」
イスラエルへの支援を変えないのはおかしい
【民主党の姿勢に高まる不満】 ムグニだけではない。ミシガン州に住む他のレバノン系有権者も、イスラエルがレバノンでの軍事作戦を一段とエスカレートさせるなか、民主党は自分たちの存在を無視していると本誌に語った。 「この国の二大政党制はもう信用できない。そして今度の選挙では民主党が最悪だ」と言ったのは、ディアボーン・ハイツに住むアリ・ダバジャ(43)。「私たちの懸念や願いに応える人間味のある声が、あの党からは聞こえてこない」 中東における戦火の拡大は、ダバジャにとってすぐれて個人的な問題だ。去る9月23日にレバノン南部ビントジュベイルを襲ったイスラエル軍の空爆では、ダバジャの親族5人が殺されている。 「これはアラブ系の、ムスリムのアメリカ人にとって、つまり私たちの大多数にとって重要な節目だ」とダバジャは言う。 「大量虐殺は取り返しがつかない。巨大なバンカー爆弾は取り返しがつかない。ああいうのは私たちの仲間を皆殺しにしてしまう」(なおイスラエル側は、自分たちの攻撃は「大量虐殺」に当たらないと主張している)。 バイデンやハリスが中東外交で「強気の姿勢」を示す、と口にする一方、レバノンにいるヒズボラ指導部を標的にするイスラエルへの支援を変えないのはおかしい、ともダバジャは言う。