吉高由里子『光る君へ』紫式部役もついに後半戦、『源氏物語』執筆へ!左利きだけど、右手で書を訓練、乗馬、母親役にも挑戦
◆為時からの「お前が女であってよかった」の重み 第32回では、まひろが父・為時(岸谷五朗)に、「お前が女子(おなご)であってよかった」と言われて。これまでずっと「お前が男であったらな」としか言われてこなかったまひろが、やっと認められるという、すごく大事なシーンだと感じています。まひろにとって一番自分のことを認めてもらいたい人がお父さんだし、父が学者でなければ自分もこうなっていなかったと思っているだろうし、その遺伝子があったから作家として注目される人物になっていく。 とはいえ、今はまだ彼女自身、注目されていくことはわからない段階。ですが、物語や文学に対して一番認めてもらいたい人に認められて、そんな言葉をかけられて、やっと生まれてきてよかったと思えた瞬間なのではないかなと思います。女性で内裏にも上がれて、役目をもらう。そこにいていいんだ、居場所をやっと見つけた、名前をもらって生きていけると感じただろうなと。さらに父のひとことで、苦しかった今までが報われたと感じましたね。 『源氏物語』は、女性としての視点から見ている物語。政(まつりごと)をやっている男性からは見られない状況や関係性もあったでしょうね。もしも男性が書いていたら、また全然違う話になっていたと思います。最初は、道長に依頼されたために書き始めたけれど、帝(みかど)に献上するために書いた物語は、だんだんとまひろの中で偽物のような違和感を覚えていったはず。私じゃなくても書けると。 それで途中から物語の書き方や向き合い方を変えていったら、次第に帝のための物語ではなくなっていって、自分にとって面白い物語を書きたくなっていったのではないでしょうか。その書きたいという気持ちに辿り着くのは、作家さんにとっては、すごく大変なことですよね。書きたい気持ちがあっても、書きたいものが明確にならないと書けない。だから、まひろはそこでバチッと書きたいものに出会った。多分、まひろは猪突猛進型なので、もう夢中になって物語を書き上げていったんだと思います。 いよいよ『光る君へ』が後半戦となりました。前半とは衣装も変わりましたし、いる場所も変わりましたし、毎日見ている風景もガラッと変わっています。今は意識せずとも、自然と第2章に押し出された感じがしていて。ぜひみなさんにも、今後のまひろ、紫式部の姿を見届けていただけたら嬉しいです。 (構成=かわむらあみり)
吉高由里子
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