オスプレイ墜落から1年、今も捜査は続いているが…日米地位協定が原因究明の壁に
鹿児島県屋久島沖の米空軍オスプレイ墜落事故に絡み、第10管区海上保安本部の村本克巳警備救難部長は28日、定例会見で「当時得た材料を基に捜査を継続している」と話した。機体の残骸を直接捜査しているかや容疑名など詳細は明らかにしなかった。米軍の裁量に左右される日米地位協定が日本側の捜査や原因究明の壁となる。 【写真】〈関連〉米空軍オスプレイ墜落現場を地図で確認する
日米地位協定17条の合意議事録は、「(日本側は)合衆国軍隊の財産について、捜索、差し押さえ、検証する権利を行使しない」とし、米側が同意すれば「この限りでない」と定める。 協定に基づき10管は事故後、回収した機体の残骸を米軍に引き渡した。昨年12月の会見では、撮影した写真などを基に捜査していると明言。米軍に協力を要請しているが、28日の会見で返答の有無について「捜査に関わるため回答を控える」とした。 捜査関係者は「外務省など他省との調整に時間がかかる。地位協定も壁となり、材料を手に入れるまでが長い」とこぼす。 日本側が十分に捜査できない事態は繰り返されてきた。2016年の沖縄県名護市沖オスプレイ墜落事故で米軍は機体の差し押さえに応じなかった。 米軍は今年8月、回収した機体などを基に事故調査報告書を公開。左ローターの変速機(ギアボックス)の破損や、警告灯が複数回点灯したが予防着陸しなかった操縦士の判断を原因に挙げた。変速機破損の根本原因は特定できていない。
捜査幹部は「制限がある中で、できることをやる」と話した。 ■緻密な交渉戦略必要(米国の基地政策に詳しい東京科学大の川名晋史教授の話) 地位協定は軍を派遣する国の権利を保障することが主眼だ。外国軍を受け入れる国側におのずと理不尽さや不平等をもたらす。日本が主体的に捜査できないことも一つの象徴だ。一方、日本は自衛隊を駐留させているアフリカのジブチとの間で、日本側に有利な地位協定を結んでいる。つまり、軍隊の派遣は受け入れる国側の主権を一部制限するが、それ自体は珍しいことではない。事故を契機に、国民が地位協定の問題を理解し、日米合同で捜査できないかなど個別の論点に絞り声を上げるべきだ。与野党が一致して5年、10年かけ国民の機運を醸成し、針の穴を通すような緻密な交渉戦略が必要になる。
南日本新聞 | 鹿児島