ダルビッシュの復活進化を示す15cmとは?
ダルビッシュ有のタブレットに映っていたのは、打席に立つダルビッシュ自身の姿だった。 5日、シアトル、セイフコ・フィールド。 前日、本拠地で行われたアストロズ戦に先発したダルブッシュは、4回、7安打、5失点で降板し、そこには思うところがあったはずだが、試合前にクラブハウスで見ていたのは8月24日、シンシナティで本塁打を放った場面だった。 1球目、ストレートが真ん中高めに。 「これ、甘かったなぁ」とダルビッシュ。2球目、カーブが外角いっぱいに決まると、解説した。「これは、いい回転がかかっていて、打てないと思いました」。 3球目、そのカーブが外角低めに外れる。そして、カウント1-2からの4球目だった。ダルビッシュはほぼ真ん中の4シームを逃さず、打球はセンターのバックスクリーンへ。およそ投手のスイング、打球ではなかった。そこで止めて、ダルビッシュは別の映像に切り替える。おそらく2013年7月4日のメッツ戦。打席に立つ自分自身を見ながら言った。 「やっぱり今とは、体の大きさが全然違う」 そういうことかと合点がいったが、確かに、一目瞭然。見比べるとよりはっきりする。当時でも十分に大きかったはずだが、今とは比較にならない。 さて、その進化はピッチングにも反映され、真っすぐでグイグイ押す“2016仕様”も定着して来た。ここぞ、というときにはギアを上げ、100マイル(約161キロ)の真っすぐでねじ伏せにかかる。その様は圧巻だ。 ただ、必ずしもダルビッシュ自身、納得しているわけではない。実のところ、見た目には分からない、わずかな狂いが生じていた。 「こんなに高くなってるんですか」 タブレットを閉じたタイミングで、2012年にデビューしてからリリースポイントがどう変化しているか、その図(グラフ1)を本人に示し、反応を待つ。見つめたのちに返ってきたのが、そんな答えだった。2014年と比べると、平均で15センチほど高くなっており、高いという認識はあり、復帰以来、意識してきたことでもあったが、それでもやや意外だったよう。 「だから、スライダーが曲がらないんだ・・・」 一つの答えに早くも行き着いた。 立ち上がったダルビッシュは、実際に投球動作を行いながら、「この高い位置からカーブを投げる分にはいいんですが、スライダーは確かに曲げにくいんですよ」と解説。続けて言った。 「となると、(スライダーのときは)もう少しリリースポイントを低くして、真っすぐのときだけ上から投げるか…」 ーー相手は、「リリースポイントが高い、真っすぐだ」と思っても、反応できない? 「無理でしょうね」 その話を少し、驚きながら聞いていた。