「選手の情が感じられる競技は他にない」競輪への情熱溢れる“卒記チャンプ”森田一郎/未来の競輪スター候補
太田海也と中野慎詞を追走して「迫力に衝撃受けた」
ーー養成所生活で「一番の思い出」を挙げるとしたら、どんなエピソードが思い浮かびますか? 森田 すごく達成感があったのはジャパントラックカップへの出場です。僕はHPD(ハイパフォーマンスディビジョン)に所属しているんですが、HPDのみんなでジャパントラックカップに参加しました。本当にハードスケジュールでとても苦しい3日間だったんですが、みんなで助け合い、サポートし合って乗り越えられました。先生やナショナルチームのコーチ陣にもすごく助けていただいて。あの3日間は本当に達成感と充実感と感謝の気持ちで溢れていました。 ーージャパントラックカップではケイリン決勝に進出して太田海也選手や中野慎詞選手に続き3着で表彰台に上っています。すでに競輪とナショナルチームで活躍している選手たちとの対決はどうでしたか? 森田 間近で後ろを走って、その迫力に衝撃を受けました。外から中野さんが来ても太田さんは一切引かず、二人はスレスレの走行で前に踏み続けていました。内にいた太田さんはブルーバンド(※)に落ちるのではないかというところを走っていましたし、そもそも中野さんと太田さんの間にスレスレどころかまったく距離がない状態。そんな中で迎えたラスト、太田さんはインで踏み直して勝利しました。僕だったら一回引くことを選択すると思うし、ちょっとこれは真似できないと思いました。(※バンク内側のブルーになっている走行不可の部分) ーー実戦で戦うことで学びがあったのですね。 森田 はい。あとでレース映像を見返しましたが、僕が選択したであろう「一回引く」をやると外に持ち出したところで捲れないし、勝つためには太田さんのあの走りしかなかったことも確認できました。ナショナルチームのコーチに感想を話していた時に太田さんは何があってもあきらめない選手だと聞きました。「どんな展開だろうが末着だろうが、ゴール線を通過するまで絶対に踏みやめない選手」と聞きました。このアドバイスは響きましたし、太田さんを尊敬しました。 ーー森田候補生は競輪とナショナルチームの二刀流でキャリアをスタートさせることになりますが、決断に迷いはありませんでしたか? 森田 迷いがなかったといえばそれは違うのですが、僕は器用ではないので、考えて決めようとすると思考の沼にハマってしまいます。だから何も深く考えずに、感覚だけを頼りに決断した形です。