“感性にふれる”展示の数々 生物ミュージアム「ニフレル」の地球に優しい試み
最近一般化しつつある、環境や人権に配慮した「エシカル(倫理的)消費」という概念。「エシカル」と聞くと、一般的には飲食業界やアパレル業界などが頭に浮かぶが、実は生き物を飼育する世界でもエシカルな試みが行われている。 大阪府吹田市の生物ミュージアム「NIFREL(ニフレル)」では、3年前から、近隣のスーパーから出た廃棄食材を動物のえさに活用する取り組みをスタートした。動物たちにとってのエシカルとは――。「ニフレル」の小畑洋館長に話を聞いた。 【動画】廃棄されるエアバッグでバッグができる!
提供者も「動物たちにも喜んでもらえるとは…」と感動
――「ニフレル」とはどのような施設ですか。 「当館は、動物園や水族館という区分けに縛られず、“感性にふれる”というコンセプトのもと、さまざまな生き物と出会うことができる生物ミュージアムです。子どものころ、身近な生き物や、夕日や雲、雨や雪などの自然現象の不思議さに、心ひかれた経験は誰しもあるはず。そうした人が本来持つ、豊かな感性を揺り戻すような展示を目指しています。 具体的には、普通の動物園や水族館のように、気候や地域で区分するのではなく、色や形、能力といった、それぞれの生き物が持つ個性が伝わるような展示表現を心がけ、たとえば、『いろにふれる』のゾーンでは色彩の美しさに、『わざにふれる』のゾーンでは、生き抜くための知恵としての行動に焦点を当てています。 自然の生き物に興味を覚えた子どものころは、彼らの動きに魅了され、じっと目の前だけに集中していたはずです。それに近い状態を再現するため、小さな水槽を多用したり、アートの手法を取り入れたりもしています」
――ユニークなエシカル活動に取り組んでいると耳にしました。 「『ニフレル』では、賞味期限を過ぎた、あるいは加工の過程で取り除かれるなどして出た廃棄食材を、同じ敷地(エキスポシティ)内にあるスーパー『デイリーカナートイズミヤ』から無償提供していただき、獣医師のチェックのもと、動物のえさとして活用する取り組みを2020年秋から続けています。 取り組みが始まったきっかけは、『ニフレル』チーム内でのちょっとした雑談でした。『大規模な動物園や水族館ならかなりの量が必要だけれど、うちの規模なら実現できるのでは。飼育する動物たちのえさのバリエーションにもなるし、微々たる量でも廃棄食材が有効に活用できたらいいよね』と。 そのうち、世間でSDGs(持続可能な開発目標)や食品ロスが話題に。“いまのタイミングなら、いけるのでは”と考え、エキスポシティを運営する『三井不動産』に相談したところ、『イズミヤ』さんをご紹介いただきました。その後、3社で話をして、『社会的な取り組みはした方がいい』とトントン拍子に話が進み、実現にこぎつけました。