「Appleのパクリ」はもはや過去! 中国シャオミ初EV「SU7」受注7万台突破と新経済圏ブチ上げ、米中貿易摩擦も何のその?
テスラ半額以下の価格
『日本経済新聞』電子版2024年4月1日付の記事で伊藤忠総研の深尾三四郎上席主任研究員は、シャオミのEV参入について次のように評している。 「米アップルのスティーブ・ジョブズ氏が初代『iPhone』を発表したときと同じような衝撃があった。アップルは『Appleカー』の構想を断念した。小米はアップルの代わりにスマホとEVを組み合わせたエコシステムの実現を仕掛けてきた格好だ。グレード名に『PRO』や『MAX』と命名するところもアップルを意識している」 深尾氏は続けて 「発売までのSU7の情報の出方もiPhoneのようだった。発売前に小出しのリーク情報を通じて意図的に期待値をあげてきた。消費者の反応をみながら、プライシングを決めている。SU7の豊富なカラーバリエーション含め、まるでスマホのようなクルマの打ち出し方だ」 と指摘する。このことからも、シャオミが本気でソフトウエアとサービスを含む統合的なエコシステム構築を狙っていることがうかがえる。 シャオミ初のEV「SU7」の最大の特徴は、同クラスの他車と比べて圧倒的に安い価格設定にもかかわらず、高性能を実現していることだ。中国での価格は約38万元(約630万円)からで、同クラスのEVであるテスラ・モデルSの半額以下だ。 とはいえ、最上級グレードの「マックス」は最高出力500kW(680ps)、最大トルク800Nmを発揮し、0~100km/h加速2.8秒というテスラ並みのパフォーマンスを誇る。高い電気性能、先進運転支援システム(ADAS)、インテリアの質感など、トータルのコストパフォーマンスは業界随一とされる。
スマホメーカーの“本気EV”脅威
そんなシャオミのEVが、業界に与えた衝撃は極めて大きい。最大の驚きは、スマホメーカーがここまでのEVを作れたことである。完成度の高さと、圧倒的な低価格を両立したSU7は、既存メーカーに衝撃を与えるに十分なインパクトがある。 特にテスラにとって、SU7は脅威となりそうだ。中国の主力工場で生産するモデル3は、SU7より割高な価格設定である。性能面での優位性も僅差でしかなく、コストパフォーマンスでは完全に見劣りしてしまう。シャオミに価格競争力で負けてしまえば、テスラのブランド力がどこまで通用するのか、試されることになる。 中国の新興EVメーカーにとっても、SU7は驚異だ。ニオやシャオペン、リ・オートといった新興勢は、これまでテスラを性能面での目標としてきた。だが、SU7の登場で、目標であったテスラをしのぐ存在が現れた。しかもシャオミは、自動車メーカーと異なりスマホで培った ・ブランド力 ・技術力 ・サプライチェーン を武器に参入してきている。土俵が広がり、競争はさらに激化しそうだ。 欧米メーカーにとっても、SU7はひとごとではない。フォルクスワーゲンやゼネラルモーターズ、フォードなどは中国市場を最重要視しており、現地生産を拡大している。手頃な価格帯のEVを投入し、シェアを広げていくのが彼らの戦略だが、SU7はそのもくろみに立ちはだかる強敵となる。見くびっていたスマホメーカーが、本気のEVを作ってきたことに、危機感を募らせていることは間違いない。