「義足は個性」モデル・海音が自分を肯定できた理由
「今の自分は100点」義足はかっこいい存在にできる
――海音さんがまたモデルを目指すことになったきっかけを教えてください。 海音: 一昨年、急に義足が合わなくなって、痛くてどうしようかと悩んでいるときに、義肢装具士の臼井二美男さんに会いに行ったんです。そこで、新しい義足をつくってもらって、その義足を受け取りに行ったとき、写真家の越智貴雄さんに出会いました。臼井さんから「越智さんが撮影してるから、海音ちゃんも撮ってもらいなよ」って軽い感じで言われたんです。 越智さんはパラスポーツの撮影を手掛けていて、義足の女性を撮影した『切断ヴィーナス』という写真集を出した方。その日は気軽に写真を撮ったのですが、越智さんから「『切断ヴィーナス』の第2弾を出すから出演してほしい」と言われました。でも、そのときは義足であることを友だちにも言わず隠していた頃だったので、即答できなかったんですよね。 その後、越智さんがわざわざ大阪まで来てくれて、「義足をハイブランドのようなかっこいいものにしたい」と熱意を伝えてくれたんです。「義足は恥ずかしいものじゃなくてかっこいい憧れのような存在にできるんだ」と気づかされて、撮影に参加することにしました。それ以来、義足モデルとして、ファッションショーの「切断ヴィーナスショー」にもチャレンジしたし、東京五輪の閉会式やパラ五輪の開会式にも出演することができました。 ――再びモデルの活動を始めてから、また自分のことを好きになれるようになりましたか? 海音: SNSなどで「すごくかっこよかった」「勇気をもらいました」とたくさんの方々からメッセージをいただくので、それを見て「またデビューできてよかった」とも思うし、自信にもつながりました。今は自分のことがすごく好き。今の自分は「100点」です! 私にとって義足は武器みたいなものですね。以前は、義足は歩くための道具だったんですけど、今は自分にしかない個性のひとつだなって思えます。 ――海音さんの「ご自愛」のコツを教えてください。 海音: コンプレックスは誰にでもあるし、自分のことを好きになれないという人もいるかもしれません。コンプレックスを好きになるのは難しいけど、ふとしたときにその部分が一番好きになる瞬間が来るかもしれない。その瞬間が訪れるまで、ポジティブにチャレンジしていけば、きっと生きるのが楽しくなるんじゃないでしょうか。 今、やりたいことができていても、どうしてもできなくなるときが来るかもしれません。でも、また再挑戦できるときが来るはず。自分の経験を振り返ってみても、人生は良いことも悪いこともいろいろと変化するんだなと思っています。だから、ぜひみんなにもポジティブに考えてほしいなって思いますね。 文・遠藤光太 制作協力・Viibar