「なによりお金が大事」の思考が本末転倒な訳、「どう稼ぐか」より「なぜ稼げるか」を考える
お互いの背景を知れば、人は理解し合える
今後、世の中の移り変わりによって、子どもたちのお金や仕事に対する価値観も大きく変わっていくと予想される。子どもたちが生きる未来について、作家で社会的金融教育家の田内学氏と、SAPIX YOZEMI GROUP共同代表の髙宮敏郎氏の対談を前編・後編でお届けする。前編では、最近の子どもたちの思考傾向や、今大切にしてほしいことについて話があがった。後編では、キャッシュレス化によって子どもたちの現金への意識が薄くなったという指摘から、家庭における金融教育のあり方や、「働くこと」の捉え方について考えていく。 【ベストセラー『きみのお金はだれのため』著者の田内学氏】家庭では、改めて「金融教育」と銘打つのではなく親が正しい使い方を見せてあげることが1番だと言う。 田内 学(以下、田内):私は、高校生で読んだ『銀河英雄伝説』が今に生きています。銀河帝国(専制政治)と自由惑星同盟(民主主義)が争うのですが、これが、両者の視点で物事を考えるきっかけになりました。作中で登場人物が、「愚将と智将は紙一重だ」と指摘する場面があります。愚将は味方を100人殺しているが、智将は敵の人間を100人殺している、というものです。 このように、世界を俯瞰して両側から見る視点はとても大切で、例えば投資も、1000円で買って2000円で売れれば自分は儲かりますが、一方で裏には、1000円で売らされた人と2000円で買わされた人がいるわけですよね。この視点は、現在私が金融教育をするうえでも、非常に役立っています。 髙宮 敏郎(以下、髙宮):私が経験してよかったのは留学です。留学当初、見た目に親近感があるアジア人が自分と違う考え方や行動をすることに、なんとなく違和感がありました。欧米の友人が土足で部屋に入って来ても、「文化が違うから」と納得できるのに。そのうちに、外見が似ていようがそうでなかろうが、おのおのが自分の国の文化を大切にしていて、それは私自身が日本の文化に誇りを持っているのと同じということに気が付きました。以降は、自分と違う考え方や生き方をする他人も理解し、尊重できるようになりました。 田内:とくに日本は、「周囲に合わせるべき」という同調圧力が強いですよね。 髙宮:異文化コミュニケーションは家族間にもありますよね。妻は幼い頃からいろいろな国を経験しているのですが、私が国内で驚いたエピソードを話すと、「海外では普通だよ」と言われます。でも、お互いの常識が違う場合は、その背景や理由さえきちんと理解すれば実はうまくいくんですよね。