WOWOWが自社映画「ゴールデンカムイ」をNetflix に投入した狙い~山本均社長にOTT時代の新戦略を聞く~【調査情報デジタル】
境 この作品は、WOWOWにとってどのような意味を持つとお考えですか? 山本 WOWOWの新たな可能性を示した作品だと考えています。アイヌの文化や歴史、食文化など、多面的なテーマを持つこの作品は、現代のダイバーシティの時代にも通じる深いメッセージ性を持っています。同時に、エンターテインメント性も高い。この両立が、私たちの目指す方向性です。 WOWOWだからこそ、深いテーマ性を持つ作品に挑戦できる。そして、それを多くの人に楽しんでもらえる形で提供できることが、我々の強みだと考えています。 境 「ゴールデンカムイ」は、これまでのWOWOWのドラマとはかなり毛色が違う印象を受けます。この変化には、どのような狙いがあるのでしょうか? 山本 おっしゃる通り、従来のWOWOWドラマは大人向けのサスペンスや企業ドラマが中心でした。しかし、「ゴールデンカムイ」は冒険活劇。そこには、新しい視聴者層の獲得という明確な狙いがありました。 我々は、常に新しい挑戦を続けていく必要があります。「ゴールデンカムイ」は、そんな我々の決意を示す作品なんです。 境 制作面でも新たな試みがあったと聞いています。 山本 その通りです。「ゴールデンカムイ」の制作では、クレデウスという制作会社とタッグを組みました。彼らは「キングダム」や「銀魂」など、大型活劇の経験が豊富です。 実は、クレデウスの社長は元WOWOWの社員でした。彼らが持つ大型活劇のノウハウと、WOWOWが培ってきた質の高いドラマ制作の経験。この組み合わせが、「ゴールデンカムイ」の魅力を最大限に引き出したと考えています。 ■放送と配信それぞれの特性を活かした戦略を構築 境 デジタル時代において、放送と配信のバランスは多くの放送局が直面する課題だと思います。WOWOWではどのようにお考えでしょうか? 山本 これは本当に重要な課題です。現在、WOWOWは約240万人の加入者を持つ放送サービスと、成長中の配信サービスを展開しています。放送サービスは、主に50代以上の長期加入者に支持されています。一方、若い世代の新規獲得には、配信サービスが重要な役割を果たすと考えています。 ここで重要なのは、放送と配信それぞれの特性を活かした戦略を立てることです。放送は、これまで通りの単一商品として維持します。一方、配信では多様な商品設計が可能です。例えば、サッカーだけのパッケージや、音楽ライブ専用のサービスなど、お客様のニーズに合わせた柔軟な提供ができるのです。