「巨人軍」「ヤンキース」への入団を選手がためらう理由…日米「名門球団」のブランド力はもはや通用しないのか
データ収集能力より必要なもの
そもそも、FA市場といえば、球団の歴史と知名度、資金力などから日本では巨人、米国ではヤンキースが常に優位な交渉を進めてきた。しかし巨人の場合、今季では大山だけではなく、ソフトバンクからFA宣言した石川柊太(33)の獲得にも失敗したように「苦戦」が続いている。ヤンキースにしても、佐々木朗希(23)の代理人がウインターミーティング中の会見で「中小規模の球団のほうが彼には合っているのでは」と私見を述べたように、ニューヨークの野球メディアは辛らつだ。また、巨人もメディア露出度が高く、選手たちも伝統球団入りをためらってしまうのかもしれない。 「チーム総年俸が規定以上になったらMLB事務局に払うぜいたく税も、影響しているようです。ぜいたく税を払いたくないとするオーナーも一定数いれば、対照的にマネー戦争になっても欲しい選手は獲るという球団もあります。ヤンキース、ドジャース、ジャイアンツ、ダイヤモンドバックス、ブルージェイズなどは大金を払う側ですが、球団の雰囲気や住環境も影響しているのかもしれません。なにしろニューヨークは物価が高いですからね」(前出・同) また、選手は優勝の可能性にもこだわる。ヤンキースは地区優勝こそ2年ぶりだが、ワールドシリーズ制覇からは15年以上も遠ざかっている。巨人も4年ぶりの優勝を果たし、トレーナーやスコアラー、グラウンド整備などの裏方の職員数では12球団トップだろう。野球に専念する環境としてはナンバー1だが、現在の日本の選手は「伝統」よりも球団の持つ「雰囲気」や「時の勢い」を優先するようだ。 巨人は23年オフ、山崎福也(32=日本ハム)にふられ、オドーアの意味不明な退団、筒香嘉智(33)にも肘鉄を喰らい、今オフは大山、石川の獲得に失敗した。日米の伝統球団は優勝しても、オフの補強で一抹の不安を残してしまった。 「かつてドラフト会議で特定球団以外の指名を拒否するアマチュア選手もいました。そういう声を聞かなくなったのは、メジャーリーグ中継の影響ですよ」(前出・ベテラン記者) 両球団を指して「データ収集能力は高いが、分析力はイマイチ」の声も聞かれた。伝統球団のユニフォームを着る誇り。それをFA市場の選手に伝えるには勝ち続けることも大事だが、選手が交渉相手の球団に何を望んでいるのかを見極める分析力が今後は重要になってくるのだろう。 デイリー新潮編集部
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