考察『光る君へ』32話 『源氏物語』を読みふける帝(塩野瑛久)の表情!彰子(見上愛)の手を取り炎から連れ出した先、お互いを想う心が芽生えないはずがない
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。『源氏物語』に着手したまひろ(後の紫式部/吉高由里子)の筆が止まりません。32話「誰がために書く」では、物語の続きを所望する帝のためにまひろは、中宮・彰子の女房として出仕することに。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載34回(特別編2回を含む)です。
大臣の下、大納言の上
寛弘2年(1005年)。一条帝(塩野瑛久)と亡き皇后・定子(高畑充希)の第一子、脩子内親王(ながこないしんのう/井上明香里)の裳着の儀式が執り行われた。女子の成人の儀式というおめでたい場であっても、内裏では権力争いの発現は避けられない。 公卿に復帰していない伊周(三浦翔平)を「大臣の下、大納言の上」に座らせるように帝が命じたことを「一条帝の定子への執着」というナレーションがあった。それはそうなのだろうけれども、脩子内親王にとってはおじさん(母・定子の兄)に当たるわけだし、こういう冠婚葬祭の席次って現代の我々でも決めるのが大変なんですよね……立場が微妙な人のお席決定ってトップダウンスタイルのほうが現場はありがたいんですよねと思いながら観ていた。 伊周が無駄に偉そうにふるまうので、そのありがたさが薄れてしまっているが。 伊周の席次は帝の道長への牽制。こうしたやり方で蘇る円融帝(坂東巳之助)の兼家(段田安則)への牽制……そうだ、一条帝は円融帝の唯一の息子だと血縁関係を思い出す。
『源氏物語』を読んだ帝の反応は?
ギスギスした内裏の様相とは打って変わって平和なまひろ(吉高由里子)の自宅……そして乙丸(矢部太郎)ときぬ(蔵下穂波)の平和な?痴話喧嘩。 「私は、こいつが美しくなって他の男の目に留まるのが怖いのです! こいつは私だけのこいつでなければ嫌なのです」 「だったらそう言いなさいよ、うつけ!」 ……何を見せられているのだ、我々は……と思ったら、まひろといと(信川清順)もそんな表情をしていたので吹き出した。しかし、乙丸が幸せそうで嬉しい。 乙丸たちを見ていたいととまひろが宣孝(佐々木蔵之介)との夫婦喧嘩を懐かしく語る姿に、宣孝の死の衝撃は日にち薬で思い出となったのだなと伝わる。 31話ラストから一週間気になっていた『源氏物語』を読んだ帝の反応。いとから問われて、そうそう! 私も気になってましたよ!と頷いた。納品後にクライアントからノーリアクションというのは、じんわりとダメージを食らうものだが、まひろはそうではない。 「あれがきっかけで、この頃書きたいものがどんどん湧き上がってくるの」 「今は私のために書いているの」 彼女の筆は止まらない。紙の上には「源氏の君は……」という文面が見える。31話で『源氏物語』が芽吹き、そのままぐんぐんと枝を伸ばし葉を広げているのだ。
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