引退か移籍か。阪神の鳥谷への「今年で辞めて下さい」“引退勧告”は暗黒史を彷彿させる不手際
岡田彰布氏もマスコミへ戦力外をリークされる形で去就問題が起き、結局、「引退してスカウトをしなさい」と引退勧告された。岡田氏は、それを拒否、自由契約の道を選択しオリックスに移籍した。真弓明信氏も、球団サイドが引退試合を用意して引退勧告を行ったが、それを拒否。自由契約を選択したが、獲得する球団は現れず、1年後にフェイドアウトするかのように引退した。 だが、近年は、これらの反省を下に看板スターの去り際のトラブルを避けるための処置が講じられていた。金本知憲氏や、桧山進次郎氏の引退に関しては、球団幹部が、早い段階から非公式に会談の席を持ち、球団の方針を伝え、「まだやれる。やりたい」という本人を地道に説得しながら引退の花道を作ってきた。事実上の戦力外だったが、そういう情報は一切表に出さずに“阿吽の呼吸”で、交渉、説得を進めてソフトランディングに成功させて綺麗な引退発表となっていた。 これは何も阪神に限ったことではない。大物スターの引退のほとんどが事実上の戦力外だが、綺麗に引退舞台を作るのだ。この3月に辞めたイチロー氏が代表的な例だろう。数々の最年長記録を更新して50歳までプレーした山本昌氏も、51歳でのプレーを熱望していたが、実質は、水面下で肩を叩かれ、抵抗したが最終的には納得する形で自ら潔くユニホームを脱いだ。 だが、今回は功労者の鳥谷に、そういう水面下のプロセスが一切ないまま、いきなり引退勧告を突きつけたのである。昨年オフの金本前監督の電撃解任劇の“裏舞台”も酷かったが、野球好きだった坂井オーナーから野球に詳しくない藤原オーナーに最高トップが交替。現場の実務の責任者も、経験のあった四藤社長から揚塩社長へ代わるなど、フロントの体勢が変わったことで、暗黒時代を改善してきたそれらのマネジメント手法も継承されなくなったのだろうか。 そして、かねてから本社が経営上、鳥谷の5年20億円とも25億円とも言われた巨大契約を問題視していたという事情もある。