「早くて未完成」と「遅くて完璧」 どちらが評価される仕事なのか?
時間をかけずに、まずは大枠の方向性を決める
ひとつは、時間の問題です。実は、0点から90点まで完成させるのにかかった時間と、90点から99点にいたるのにかかる時間は同じだと言われています。そして、99点から100点にするには、さらに同じだけの時間がかかる。徐々に、時間をかけても精度が上がらなくなっていくのです。 これは、ベル研究所のトム・カーギルが提唱し、90点から100点にするのは、0点から90点にするのと同じだけの労力が必要になるという意味で「90対90の法則」といわれています。ですから、90点のところで止めておく。もしくは60点くらいでもOKとする。 60点じゃ使いものにならないのではないか? とお思いかもしれません。もちろん、最終の成果物が60点では困ります。しかし、大枠の方向性を決めるには60点で十分なのです。 たとえば、先ほどの牧田さんのリサーチの例では、新聞と雑誌をリサーチし、文献を調べ、国会図書館に行って100点を目指した結果、成果はゼロでした。そのアプローチ自体が間違っていたからです。初期の段階で、アプローチ方法自体を変えてみるべきでした。暗中模索で何もわからないときに知りたい情報は、東に行くか西に行くか、そういった大きな方向性です。 「文献で調べられるのか、それともやっぱり直接、医師などに聞かないとだめなのか?」 実は早期に結論を出したいのはそこでした。ざっと文献をあたってダメだったという結果は、60点の結果かもしれませんが、大きな方向性のアンサーにはなっています。満遍なく調査をしていたら、2日、3日かけて完璧を目指してしまうかもしれません。 しかし、調査自体で100点を目指しても意味がありません。知りたいことのアンサーになってさえいれば、60点でも70点でもかまわないのです。東に行くか西に行くか、そういうことで悩んでいるときに、何ヶ月もかけて85・3度の方角に行きなさいといった100点の精度の答えは不要です。それより役に立つのは、「西はおそらくダメ」という結論を3時間で出すことです。 そして東にちょっと進んでみて、さらに違う情報が手に入ったら、また方角を決めていく。重要なのは、仮説検証のサイクルを高速で回すことです。そのためにも、とにかくラフでいいので、おおまかな答えを見つけることを最優先とします。おおまかな答えにYESかNOが出たら、精度を高めることはあと回しにして(必要ならあとで行う)、次に進んだほうがいい結果につながります。