タワマンが増え続ける街にはしたくない…異例の「タワマン禁止令」を打ち出した神戸市長の危機意識
■民間の鉄道を約200億円で買収し市営化 さらに市は、4年前には郊外にのびる民間の鉄道を約200億円で買い取り、市営化した。 運賃は最大で半額にした。郊外を暮らしやすくし、人口減少に向き合おうという本気度が伝わってくる。鉄道買い取りを決めた経緯を、市長は次のように語る。 「北神急行電鉄という路線が、新幹線の新神戸駅からほとんどトンネルで山の向こうの谷上駅まで出て、市営地下鉄と相互乗り入れをしていましたが、片方は民間鉄道会社で、片方は市営地下鉄ですから、初乗り料金が発生したわけです。 そこで思い切って神戸市営地下鉄が北神急行電鉄を買収しました。初乗り料金がなくなり、終点の谷上駅と三宮駅との料金が550円から280円へと半額になりました。これも、既にある鉄道インフラを賢く使うことの一例です。そうすると、谷上から三宮は、だいたい11分ぐらいなので、郊外の谷上から神戸電鉄という私鉄で連結され、そういう郊外エリアのポテンシャルも高まります。」 ■長期的な視点で暮らしやすさを高めていく 「コロナの影響はありましたが、この市営化と料金引き下げにより、乗客数はコロナ前より40%ぐらい増加しています。こういう形で郊外のポテンシャルを生かす。そしてここのエリアは近くに里山や茅葺民家もあります。農村舞台もあります。こういう豊かな自然と文化が一体となったエリアが、私たちのライフスタイルの中で選考される可能性がこれから出てくるのではないかと思っています。 そういう長い目で見た移住・定住のニーズを適切な投資を行うことによって、そして既存のインフラを賢く使うことによって、新たな人口増に結びつけていこう。目先の人口増ではなく、より息の長い取り組みをこの人口減少時代にふさわしい形で展開していこうというのが神戸市の考え方です」 ---------- 森内 貞雄(もりうち・さだお) NHK報道局 社会番組部 ディレクター 1982年熊本県生まれ。2006年NHK入局。旭川放送局、大型企画開発センターなどを経て現職。NHKスペシャル、クローズアップ現代の取材・制作を担当。担当に「戦後ゼロ年東京ブラックホール1945–1946」、「東京ブラックホールII 破壊と創造の1964年」、シリーズ「2030 未来への分岐点」、「OKINAWA ジャーニー・オブ・ソウル」など(いずれもNHKスペシャル)。 ----------
NHK報道局 社会番組部 ディレクター 森内 貞雄