戦没船員、残留日本兵――“戦争を知らない”天皇陛下の慰霊【皇室 a Moment】
日テレNEWS
ひとつの瞬間から知られざる皇室の実像に迫る「皇室 a Moment」。天皇皇后両陛下は、民間の「戦没船員」など、光の当たりにくい太平洋戦争の犠牲者の慰霊も重ねてこられました。日本テレビ客員解説員の井上茂男さんと、「令和の慰霊」にスポットを当てます。
■戦没・殉職船員追悼式に出席された天皇皇后両陛下
――井上さん、こちらは天皇皇后両陛下が慰霊碑に供花されている場面でしょうか? 5月24日、神奈川県の三浦半島にある「戦没船員の碑」で「第50回戦没・殉職船員追悼式」が行われ、天皇皇后両陛下が花を供えられている場面です。
太平洋戦争では、兵員や物資の輸送のために、民間の商船や漁船などが徴用され6万人を超す船員たちが亡くなりました。遺族らが出席した追悼式では、両陛下は参列者と共に黙とうを捧げられました。
(天皇陛下) 「先の大戦の記憶が薄れようとしている今日、我が国の平和と繁栄が、戦没・殉職船員を始めとする多くの人々の尊い犠牲の上に、国民のたゆみない努力によって築き上げられてきたものであることを、決して忘れてはならないと思います」 その後、両陛下は「安らかにねむれ わが友よ 波静かなれ とこしえに」と書かれた「戦没船員の碑」の前で供花されました。追悼式は毎年5月に行われ、節目の年などに皇室の方々が参列されてきましたが、追悼式が大きく取り上げられることはなかなかありません。 ――軍人ではない民間の船員さんがたくさん亡くなったということなんですね。 そうです。今年も“慰霊の夏”が巡ってきました。8月15日には78回目の「終戦の日」を迎えます。 ――きょうは井上さんと共に「戦没船員の慰霊」を中心に、天皇皇后両陛下の戦争犠牲者に対する慰霊にスポットを当てたいと思います。
「戦没船員」とは、先の大戦で亡くなった民間の船の乗組員のことです。日本殉職船員顕彰会のデータによりますと、戦没船員はおよそ6万600人に上ります。商船や漁船、発動機と帆を備えた機帆船の乗組員たちで、魚雷攻撃や空爆などで沈没した徴用船はおよそ7000隻に上ります。戦争で戦死した人の割合を「損耗(そんもう)率」で表しますが、軍人の損耗率は陸軍が20%、海軍が16%なのに対し、徴用された船員は推計で43%に上ります。 ――随分高いですね。 はい、民間の船員は軍人の倍以上、実に4割が亡くなったんですね。 そして犠牲者が若いことも特徴の一つです。船員が次々と亡くなって若い船員が大量に養成され、犠牲になった20歳未満の船員はおよそ1万9000人、実に31.43%も占めています。今の中学3年生の14歳の少年も1000人近く含まれていますから、なんとも痛ましいです。 ――私の息子がちょうど中学3年生14歳なんです。親としても、いたたまれない思いがします。 そうですね。あどけない少年達も次々亡くなったということです。 8年前の追悼式で、かつて仲間を失った元船員に日本テレビがインタビューしています。