戦没船員、残留日本兵――“戦争を知らない”天皇陛下の慰霊【皇室 a Moment】
両陛下はこの慰霊に先立って残留日本兵の遺族4人とも会われました。天皇陛下は、残留日本兵たちが長くインドネシア国籍が与えられなかったことを遺族のヘル・サントソ・衛藤さんから聞いて「大変ご苦労されましたね」とねぎらい、皇后さまは遺族の1人に「あすは心を込めて供花させていただきます」と話されていました。
(ヘル・サントソ・衛藤さん) 「まず、一番頭に浮かんだのは、そこに飾ってある親父の顔とね、戦時中に苦労された部分が頭に浮かんで涙出ましたね」「一番嬉しかったと思いますよ。我々2世、3世よりも一番天皇陛下・皇后陛下と会いたいのは残留兵の皆さんなんですよ」 残留日本兵には、戦後50年の1995(平成7)年、日本の大使によって友好に功績があったとして感謝状が贈られ、その名誉が回復されました。上皇ご夫妻の訪問はその4年前でしたから、会える環境が整っていなかったんですね。残留日本兵の最後の一人の方も2014(平成26)年には亡くなったそうですから、衛藤さんの言葉が胸に迫ります。 ――残留日本兵の方々のことを知りませんでした。知らずにいました。でも両陛下が会われたことでそういった歴史を我々も知ることになりますね。 そうですね、そっと気付かされるといいますか、そういう歴史があったことを改めて思いました。
天皇陛下の日本兵への慰霊では、皇太子時代の2007(平成19)年7月のモンゴル訪問が思い出されます。公式訪問ではその国の英雄墓地などを訪ねて供花されますが、この時、旧ソ連のシベリア抑留でモンゴルに移され、現地で亡くなった2000人を慰霊する碑で供花し、抑留を経験した在留邦人の代表と懇談されました。 陛下は今年、インドネシア訪問前の記者会見で戦争に対する思いを話されています。
(天皇陛下) 「私たち自身は、戦後生まれであり、戦争を体験していませんが、上皇上皇后両陛下からも折に触れて戦時中のことについて伺う機会があり、両陛下の平和を大切に思われる気持ちをしっかりと受け継いでまいりたいと思っております」 陛下はこれまでも、戦争を知らない世代だからこそ、展示や書物、映像などを通じて戦争の悲惨さを記憶に留め、平和を愛する心を育むことが大切だと述べ、真摯に向き合おうとされていることが伝わってきます。 ――きょうは天皇陛下の「戦没船員の碑」やインドネシアとモンゴルでの慰霊を見てきましたが、陛下のいつも心を込め、真摯に慰霊される姿はとても印象的ですね。