実は片マヒの人、体が不自由な人のほうがむしろ楽しめる「遊びリテーション」片手キャッチボールの全手順
「遊びリテーション」とは、遊びでありながらリハビリテーション的な効果が期待できる高齢者向けのアクティビティです。およそ30年前に介護現場で誕生し、各地で行われてきました。 【画像】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待「すべてが壊れた日」 リハビリには医師の処方が必要ですが、遊びは参加する人の好みでいかようにもアレンジできます。そんなふうに、誰でも自由に始められるという利点が、遊びリテーションにはあるのです。 今回は、病気や障害のある人でも参加できるよう工夫された120以上のレパートリーのなかから、とくにおすすめできる活動を、『完全図解 遊びリテーション大全集』から抜粋してお届けします。 前編記事〈【言語聴覚士・理学療法士が解説】実はすごい。楽しみながらリハビリにもなる「遊びリテーション」本当の効果〉はこちらから
片マヒの人には健側を使った片手でできる遊びが有効
脳血管障害は多くの後遺症を引き起こします。脳の損傷箇所の反対側に出る運動障害もその一つで、手脚がぶらぶらになる「弛緩性マヒ」と、硬直する「痙性マヒ」があります。 単に手脚が不自由になっているだけではありません。関節の曲げ伸ばし運動がひとまとまりになって一度に出る独特の動き(共同運動)や、姿勢によっては反射運動が出たりします。 また、片マヒの人は仙骨座りになりやすく、患側(マヒ側)に倒れやすいのも特徴です。マヒのない健側前方に頭を出すようにしてバランス感覚を習得し直してもらう必要があります。 このような片マヒの人におすすめなのは、健側を活用して片手でできる遊びです。たとえば下記の図のように、片手でバレーボールを「ドンドン」と2回突いたあと、その同じ手でボールを肩まで上げて投げるキャッチボールはそのひとつ。片マヒの人は、健側だけに動きを絞れるゲームなら健常なお年寄りより上手にできる場合もあることを知っておきましょう。
片マヒの人も楽しめる「片手キャッチボール」
片手キャッチボールとは、一言でいえば「片手だけで行うキャッチボール」です。体に不自由がない人も、片方の手だけでボールを投げる・受けることで「やりとり」をする遊びです。ボールは、必ず床にワンバウンドしてから相手に届くように投げます。 この遊びは片マヒの人でもできるうえ、仲間づくり・関係づくりに役立ちます。相手が受けやすい球を投げ、それを受け止めるという単純なやりとりをとおして、心と心が次第につながっていきます。必ずワンバウンドで投げれば、誰でも参加できるでしょう。 脚光を浴びてもらいたいのは片マヒの人です。片手でのキャッチボールに全員で挑戦してみることで、片マヒの疑似体験ができます。両手では容易なことが片手だといかに難しいかを、身をもって知ることができます。 用意するものは、2人につき1個のボール。材質、大きさ、重さによって参加者の持ち方は変わりますし、投げたときの弾み方も千差万別です。いろいろな種類を用意して、参加者の状態や段階に合わせて試してみることをおすすめしますが、まずはやわらかくキャッチしやすいキャンディボールを用意するといいでしょう。 バレーボールやバスケットボールは硬くてよく弾むのでいい運動になりますが、片マヒの人にはおすすめできません。とくに後者は重いので、元気なお年寄り向きと言えるでしょう。 この遊びは2人から始められるので、プログラム開始時など参加者が徐々に集まってくる場面で導入すれば、待ち時間も飽きさせません。早く来た人にすぐ始めてもらいましょう。参加者が増えたら斜め前の人と、さらに増えたらグループでランダムにキャッチボールし合って混乱を楽しむ遊びへと進化させます。