がんが認知症発見のきっかけになることも。高齢者のがん治療と認知症の関係
現状をふまえたうえで困らないための策を考えます
認知症のがん患者さんがかかえやすい問題として、治療方針を決める際に本人の意向が無視されやすいこと、治療にともなう問題が生じやすいこと、家族の負担が大きくなりやすいことなどが挙げられます。 認知症であろうとなかろうと、がんへの対応を考えるうえで「本人の意向を尊重する」という原則は変わりません。一方で、認知機能の低下は、がん治療に大きな影響を及ぼすおそれがあります。がんの治療を始める前に、認知機能の状態を確認しておく必要があります。
対策の3つの柱
認知機能の低下がみられる患者さんに対し、がんの治療を担当する医療機関では、次のような点に配慮しながら対応が進められます。 ■本人の理解を助ける 治療に関する意思決定をおこなうために必要な情報は、本人にわかりやすく伝えることが必要です。とりうる選択肢が簡潔に示されていると、本人や家族は検討しやすくなります。医師と家族だけで話を進めないようにします。 ■生じやすい問題に備える 「この患者さんは、認知機能の低下がみられる」などとわかっていれば、医療者は適切に対応しやすくなります。 がん治療の担当医だけでなく、精神症状を担当する医師や、看護師、医療ソーシャルワーカーなどがチームとしてかかわりながら、治療中に起こりやすい問題に備えます。 ■退院後も困らないようにする 退院後、療養生活をだれがどのようにサポートできるか、検討する必要があります。 認知症そのものへの対応も必要になってきます。介護保険をはじめさまざまな制度を活用し、訪問診療や訪問介護などを受けられるよう、できるだけ早い段階から調整していきます。 続きは<認知症とがん治療を両立させるために~「本人が決める」ために必要なこと>で公開中。
小川 朝生(国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発分野長)