アサド政権崩壊のシリア、政権明け渡しで合意…イスラエル軍はシリア国境のゴラン高原を占領
【カイロ=西田道成、エルサレム=船越翔】アサド政権が崩壊したシリアで9日、反体制派とアサド政権首脳が首都ダマスカスで会談し、政権移譲することで合意した。一方、イスラム過激派が新体制を主導することを警戒するイスラエルは、シリア各地の空海軍基地などを相次いで空爆した。
ロイター通信によると、反体制派を主導するイスラム過激派組織「シャーム解放機構」(HTS)の指導者アブムハンマド・ジャウラニ氏は9日、ダマスカスでムハンマド・ジャラリ首相と会談し、政権移行の準備について意見交換を行い、ジャラリ首相は政権を明け渡すことに同意した。
しかし、反体制派は周辺国との関係などから思惑の違う各勢力に分かれており、円滑な政権移行と、一致した新政権樹立が実現するかどうかは不透明だ。
シリアでのイスラム過激派組織の台頭を警戒するイスラエルは9日、ダマスカスや地中海沿岸の西部ラタキアの空海軍基地などを空爆した。AFP通信は、在英のシリア人権監視団の情報として、100回以上の空爆が行われたと報じた。
標的となったのは海軍艦船や戦闘機、レーダー、武器貯蔵庫など。アサド政権の武器が新体制の手に渡り、イスラエルの安全保障の脅威となるのを防ぐ措置とみられる。
イスラエル軍はまた、シリアとの国境にあるゴラン高原の緩衝地帯に侵攻し、占領した。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日の記者会見で、「ゴラン高原は永遠にイスラエルの一部だ」と述べた。
これに対し、エジプトやサウジアラビアは、「シリアの治安回復の機会を損なう」(サウジ外務省)などとして、イスラエルの動きを非難した。