平成は「語学」のため、令和は「稼ぐ」ため…ワーホリが爆発的に増加した背景にある「目的の変化」
「令和のワーホリ」の姿とは
2010年以降も、オーストラリアのワーホリは同じレベルの規模で推移していく。しかし、じわじわと状況が変わり始めるのは、オーストラリアが順調に経済成長を遂げ、賃金をどんどん上げ始めたことだ。 また、かつては強さを誇った円が、どんどんその価値を下げるようになっていった。対ドルだけではない。対ユーロ、対オーストラリアドルに対してもだ。 すでに新型コロナの前から、そのことに気づいていた若者たちがいた。松久保さんは語る。 「日本ではアルバイトといえば、時給1,000円くらいが普通ですよね。ところが、オーストラリアでは2,000円近くもらえたわけです。物価は今ほど高くなかったですから、現地でかなり稼いで貯めていた人はすでにたくさんいました。ワーホリからそのまま学生ビザに切り替えて、ずっと働いている人もいましたね」 これこそ「令和のワーホリ」である。 そして新型コロナがやってきて、入国が一気に制限された。そのため「海外に行ってもいいかな」という人が、数年にわたってプールされていった。 これが爆発しているのが、今である。テレビでの「稼げる」報道も、それを大きく後押しした。また、現地から直接、SNSで情報が得られるのも「令和のワーホリ」の大きな特徴だ。だが、松久保さんは心配もしている。 「仕事が見つけにくくなっていますが、行動力のある若者たちはそんなに困っていないんです。問題なのは、行ったはいいものの、無計画過ぎて困っている人が今、出てきていることです」 蓄えも持たず、家も用意せず、ツテも仕事のあてもない、英語力もない。留学エージェントも使わず、語学学校にも行かないので、相談するところも情報源もない。 「それで現地でうまくいかない、とネガティブに発信されることは、ワーホリにとって、とてももったいないことです。行くのであれば、やはりそれなりの準備をしてほしい、ということなんです」 上阪 徹 ブックライター ※本記事は『安いニッポンからワーホリ!最低自給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
上阪 徹