聖望学園、苦しみながらも初戦を突破
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選第2日は6月2日、各地で2回戦12試合が行われ、ベスト16が決まった。プレミアリーグEASTの昌平とプリンスリーグ関東2部の西武台、関東高校大会予選を制した正智深谷と同準優勝の東京成徳大深谷は、6月8日の3回戦から登場する。 【フォトギャラリー】聖望学園 vs 県立浦和 関東高校大会予選ベスト4の聖望学園は浦和を1-0で下し、3回戦で浦和学院と顔を合わせる。 初戦を迎えた聖望学園は、立ち上がりから短いパスを使ってボールを丹念につないだ。ボランチ小山晃也(3年)を経由して右SBペイトン有玖主、左2列目の吉岡洸晟(ともに3年)がサイド攻撃を仕掛け、1トップの増本怜音(3年)に最終パスを届ける形を多用。 前半2分、MF田中翼(2年)が勢いのあるミドルシュートを打ち、19分には小山の中距離弾がバーをたたいた。25分に放ったMF野元里晟(3年)のヘディングシュートも、わずかに右ポストをかすめる。 1回戦で越谷西にPK戦勝ちした浦和は、相手の鋭い出足とプレスに苦戦し複数のパスをテンポ良くつなげなかった。後方からの支援も足りず、分厚い攻撃で敵陣に進出する機会が少なかった。ただグループとしての守備は一人ひとりが粘り強く忠実で、平凡なミスから守りにほころびが出ることもなかった。 個の力量で勝る聖望学園が優位に進めたものの、前半はともに無得点で終了した。 聖望学園は後半開始から、大型FW太仲貴哉(3年)を投入して2トップに変更。増本だけだったパスのターゲットを拡大した形だ。同時に送り込まれたMF原嶋佑哉(3年)は左の2列目に入り、外から果敢に仕掛けた。 3分だった。左CKから野元が遠いポストに鋭いボール送ると、浦和DFのオウンゴールを誘った。この先制点が決勝点となった。 太仲は6分に決定的なシュートを放ったが左に外し、20分には22メートル付近のFKを小山が直接狙ったが、GKにパンチングで防御された。太仲は32分にも強烈な一撃を放ったものの、わずかに左へ流れていき追加点を奪えなかった。 小降りだった雨は後半15分過ぎから豪雨へと変わり、ピッチのあちこちに水がたまった。これで両チームとも、パスの強度やボールコントロールに苦しむことになる。 守備で健闘していた浦和は16分、カウンターから司令塔のMF竹林葵(3年)がシュートしたが、GKの正面を突いて好捕されてしまう。アディショナルタイムには、FW國貞翼(3年)が中央から持ち込み、フリーの状態で左足シュートを放ったが、惜しくも左へそれてこの試合最大のチャンスを逃した。 苦しみながらも初戦を突破した聖望学園の山本昌輝監督は、「1回戦で浦和の試合を見てとても粘り強いチームだと思い、延長、PK戦まで準備していました。トーナメントの初戦というのは難しいので、内容はともかく苦労して勝てたのは良かった」とひと息ついた。 現在、県最上位のS1リーグで暫定首位と好調だ。中断前ラスト2試合では関東高校大会予選を制した正智深谷に3-0で快勝し、昌平セカンドにも5-1と大勝して今大会を迎えた。 好人材が多い中、この1カ月余りで最も成長したのが太仲だという。この日はコンディションの関係でベンチスタートとなったが、山本監督は「リーグ戦の正智深谷戦でも昌平戦でも得点してくれた。今日のピッチ状態では持ち味を発揮できませんでしたが、守備の背後にスペースがあると特長を発揮できる。今は十分に1トップを任せられる存在ですよ」と頼もしそうに見つめた。 けががちのエースFWファサン ダニエル(3年)に無理をさせられない状況。そんな中、太仲の台頭は初優勝と7大会ぶり2度目のインターハイ出場に願ってもない朗報だ。 (文・写真=河野正)