親が「相続税対策だ」と言って、墓地や仏壇などをせっせと購入しています。いずれ使うものとはいえ、今から購入する“メリット”はありますか? 早く買うほうがお得なのでしょうか?
「相続税対策」と称して親が墓地や仏壇の購入に励んでいると、子どもとしては「こんなに早くからそろえる必要があるのか」と不安や疑問を抱くことがあるかもしれません。確かに、墓地や仏壇は将来的に必要になるものですが、生前から購入することにどれほどのメリットがあるのでしょうか。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる? 本記事では、相続税対策としての墓地や仏壇の早期購入が本当に得策であるのかを解説していきます。
墓地や仏壇の購入は相続税対策になる?
結論からいうと、墓地や仏壇の生前購入は相続税対策として有効です。国税庁では、相続税がかからない財産として、墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物(祭祀(さいし)財産と呼びます)をあげています。 さらに民法897条には、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とあります。 これは、祭具や墓地のような祭祀財産は通常の相続財産とは区別されて、特定の人が継承するという内容です。 つまり、祭祀財産は相続税の対象とはならないので、事前に祭祀財産を購入しておけばその分の費用に対しては、相続税はかからないということになるのです。また祭祀承継者は必ずしも法定相続人である必要はありません。仮に祭祀の主宰者が故人の「いとこ」のような関係であっても、祭祀財産を非課税で継承することができます。 さらに、祭祀承継者が相続を放棄していても、祭祀財産と相続は別物なので祭祀財産を放棄したことにはなりません。万一、相続財産のうち負の財産が多く、相続を放棄したとしても祭祀財産に関しては放棄したことにはならないということになります。
祭祀財産として認められるもの
祭祀財産は、祖先を祭るために必要な財産ですが、どこまでが民法の規定する「系譜、祭具及び墳墓」に該当するのかを見ていきましょう。 ■系譜 「系譜」とは、分かりやすくいうと家系図のことです。冊子や巻物、掛け軸などに先祖代々の血縁関係を書きつづったものをさします。一般家庭では作成されることは珍しいかもしれませんが、テレビや歴史資料館で武将や貴族などの家系図を目にしたことのある人もいるでしょう。 ■祭具 「祭具」は、位牌、仏壇、仏像、神棚、神体、神具、仏具、庭内神祠(しんし)といった祭祀や礼拝の際に用いる器具や道具のことです。ただし「仏間」は、あくまでも建物内の部屋の一部であり、仏壇や神棚のために用意された部屋であっても祭具とは認められていません。 ■墳墓 「墳墓」は、墓地、墓碑、ひつぎ、霊屋といった遺体や遺骨の埋葬に関わる設備や道具のことです。墓地は「墳墓と社会通念上一体のものと捉えられる程度に切っても切れない関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地」に該当する場合のみ、祭祀財産として認められます。 そのため、墓碑に対してあまりにも広大な土地であると判断されると、祭祀財産として認められないこともあります。