「危ない入るな」「やだ、釣りたい」…トラブル絶えない港湾釣り、共存探ります! 県内初のモデル港指定「将来は定期開放めざす」 志布志港で始まった挑戦
国土交通省の「釣り文化振興モデル港」に県内で初めて指定された鹿児島県志布志市の志布志港。市民参加の釣りイベントが、新若浜地区防波堤で初めて開かれた。安全性確保やマナー向上を図りつつ、釣りを魅力の一つとした港や地域のにぎわい創出へ、官民連携の取り組みが始まった。 【写真】〈関連〉志布志港新若浜地区防波堤であった釣り教室に参加する家族連れ。背後にはガントリークレーンがそびえる=志布志市志布志町安楽
「喜ばしい。活性化につながることを期待する」。22日朝、モデル港指定証を国交省九州地方整備局の坂井功副局長から受け取った下平晴行市長はあいさつした。市議や観光関係者らが出席し、港の活用増や魅力アップに期待を寄せた。 モデル港は、観光資源としての港湾での釣り施設や防波堤利活用による地域振興を進めるのが狙い。全国で21港が指定されている。 □ ■ □ 国交省志布志港湾事務所や市によると、志布志港では危険な釣りやごみ放置が問題視されてきた。港の20~30年先の長期構想策定に向けた県の会議でも、企業や工事車両が多いため、一般の車や人が行き来することへの安全上の懸念や、ゾーニングを求める意見が出ている。 一方で市民や観光関係者からは、釣りを自由に楽しめる環境やにぎわい・交流拠点を求める声が根強い。 「釣り利用」と「安全性確保」の両立を図りつつ、海釣りを観光の目玉の一つとするため、市は2月、「志布志港の利活用にかかる検討会」を官民で立ち上げ。消防や海保、警察の指導を受けながら、安全対策を話し合ってきた。
□ ■ □ 22日のイベントは、エリアを指定し監視員と監視船を配置。参加者のライフジャケット着用を徹底し、地震・津波を想定した緊急時避難場所も説明した。志布志港湾事務所の渡邉佑輔所長は「海の事故を防ぐ安全対策やマナーを守る大切さを学んでもらう大事な機会になる」。 参加者約70人は、国際コンテナターミナルのガントリークレーンを背景に釣りに挑戦。釣り教室、軽食販売もあった。雷雨のため30分で中断されたが、「楽しかった。次は魚を釣りたい」と松山小学校1年、河野壮流さん。次回開催を求める声が参加者から相次いだ。 渡邉所長は「今回のような釣りイベントを通して、できることを探り、帰りに食事や温泉を楽しんだり、観光名所を巡ったり、地域経済活性化につなげる方法を考えてほしい」と話す。 市港湾商工課は、今後検討会で反省点・課題を振り返り、「定期的に釣りイベントを開き、期間や時間を決めた定期開放を目指す」としている。安全とマナーを守る魅力ある港へ、モデル港としての挑戦は始まったばかりだ。
南日本新聞 | 鹿児島