プレーやメンタルにも影響する「視覚」や「視力」。ゴルファーには“目の筋トレ”が必要!?【元プロ野球審判のコーチが教える"心トレ"#12】
プロゴルファーやジュニアゴルファーをはじめさまざまなスポーツ選手のメンタルアドバイザーを務める丹波幸一氏。元プロ野球の審判という異色の経歴を持つティーチングプロ、丹波氏がゴルファーに役立つ”心の操作法“を連載形式で語っていく。第12 回のテーマは「ゴルファーと目の関係」だ。
ビジョン、視覚や視力についてもゴルフメンタルには影響しますが、この分野に取り組もうとしている選手は、世界を見ても少ないです。癖を知るだけでも、大きな気づきがあるので、今回はゴルフスポーツビジョンについてお伝えします。
ゴルフは目からの情報が8割!
私はプロ野球審判をしていた時に、いち早くスポーツビジョンのトレーニングを取り入れ、20年以上専門医の下で取り組んで来ました。日本で第一人者と言われるスポーツビジョン専門のオプティメトリストにメニューを組んでもらい、“目の筋トレ”をしてきました。 一般的にはスポーツビジョンというと、速いものが見えるためのトレーニングだと思われていますが、実はそれだけではなく、ゴルフにも生かされるべき内容が満載です。 ゴルファーは目からの情報8割で、色々な状況判断をしています。ティーインググラウンドからの景色、ハザードまでの見え方、目標への距離感、視覚的なプレッシャー、グリーンのライン読みなど、ラウンド中に決断するゴルフの80%は目からの情報に頼っています。 目を“唯一の剥き出しの臓器”と考えると、サングラスをして保護する人もいますが、ほとんどのゴルファーは無防備です。また目は“アスリートが鍛えない唯一の筋肉”でもあります。飛距離アップのための筋トレ、安定感を増すための体幹トレなどには労力を注ぎますが、80%も視覚からの情報に頼っている目に対しては、保護もケアもトレーニングもされていないのが現状です。 ラウンド中にどれくらい錯視錯覚が起こっているかご存知でしょうか? ゴルフ場には練習場にあるマットや打席の直線、フラットなライは一切存在しません。曲線、傾斜が入り乱れて、特にグリーンに関しては、上りのパットなのか下りのパットなのかがわからなくなるくらい錯視錯覚が起こります。距離感ですら、実際より遠くに見えたり、逆に近くに見えたりもします。ゴルフコースの設計者はティーインググラウンドにも2%~3%の傾斜をつけています。これは水の流れが必要な傾斜を確保するためです。 よくあるのが、4人全員のティーショットが右に行ってしまった場合などには、後方からティーマークの方向だけを確認して、その向きに騙された! と片付けていますが、実際にはこの2%~3%の傾きが影響している場合が多いのです。 グリーン上も最低でも2%の傾斜が水捌けのために必要なので、傾斜の入り乱れでゼロラインができたり、錯覚でフラットに見えたりします。 実際にショートパットを外した時に口から出てくるのは、「引っ掛けた」「フェースが開いた」など技術的なことが原因だと思っている方もいますが、実は傾斜計を当てるとしっかり傾斜が効いているのがほとんどです。真っ直ぐに見えて、曲がったりするラインは、目には見えない1%くらいの傾斜があったりします。この1%程度の傾斜は、視覚的にはフラットに見えてしまうのです。