小泉家を見守ってきた庭の木とは?アンバサダーを務める「田中一村展」で小泉孝太郎がどうしても気になった作品は
田中一村展 おすすめ作品1:《椿図屏風》
若くして様々な困難を経験し、芸術家としての道を模索していた20代の一村。寡作の空白期とみられていましたが、実際には、新たな表現を求め、力作を多く制作していたことが近年わかってきました。 《椿図屏風》は、若き日の一村が、新しい画風に挑戦しようとする意欲と切実さの迫る作品です。2013年に新出した本作は、空白期とされていた昭和初期の活動のイメージを一新させました。 椿図屏風 昭和6年(1931) 絹本金地着色 2曲1双 千葉市美術館蔵
田中一村展 おすすめ作品2:《白い花》
30歳で千葉に移住した一村は、畑仕事や内職をしながらも絵を描くことを生業にしました。昭和22年、《白い花》で青龍展入選を果たします。本作には、美しいヤマボウシの木などが描かれています。 明るい色彩と、生命力を感じさせるモチーフは、作者の困難な状況を想像させない、希望に満ちた作品です。晩年期の奄美での大作との共通点も見られます。 白い花 昭和22年(1947)9月 紙本金砂子地着色 2曲1隻 田中一村記念美術館蔵
田中一村展 おすすめ作品3:《奄美の海に蘇鐵とアダン》
蘇鐵(ソテツ)とアダンの間から、立神(たちがみ)と呼ばれる小島が覗く構図が印象的な絵画です。沖合いに浮かぶ立神は、神様が最初に立ち寄ると言われ、古くから信仰の対象とされてきたもので、神秘的な雰囲気を放ちます。 葉を黒いグラデーションで描くなど、従来の表現にとらわれない実験的な試みも見られます。晩年まで衰えることのなかった創造性の高さを象徴する作品ともいえます。 奄美の海に蘇鐵とアダン 昭和36年(1961)1月 絹本墨画着色 田中一村記念美術館蔵
田中一村展 おすすめ作品4、5:《アダンの海辺》、《不喰芋(くわずいも)と蘇鐵》
《アダンの海辺》と《不喰芋と蘇鐵》は、一村の作品を代表する大作二枚で、揃って展示されるのは14年ぶりです。 《アダンの海辺》は、青い海と白い砂浜、そして風に揺れるアダンを切り取った、独特のアングルが印象的。まるで奄美の海辺にたたずんでいるような気持ちにさせる作品です。 《不喰芋と蘇鐵》には、奄美に自生する緑豊かな自然が画面いっぱいに描かれています。奄美においては何気ない、ごく普通の植物、クワズイモを芸術に昇華させた本作からは、一村の自然に対する感謝の気持ちが伝わってくるようです。 アダンの海辺 昭和44年(1969) 絹本着色 個人蔵 不喰芋と蘇鐵 昭和48年(1973)以前 絹本着色 個人蔵