世界で日本だけ……夫婦同姓「最後の国」に国連が4度目の勧告。夫婦別姓トラブルで軌道修正する国も?
◆スイスのダブルネーム再導入は進歩か、後退か?
男女平等とうたえば聞こえはいいですが、スイスの現行システムにおいて不利益を被っているのは、またしても女性側。 女性側からは、ビジネス上の理由から自らの姓を保持したいけれど、子どもとの親子関係も可視化したいという要望が強く、約10年の別姓運用期間を経て、2024年に入りダブルネーム制度復活に向けての動きが本格的になりました。 さらに今後は、夫婦で順序の違う複合性(例えば、妻は「自分の姓+夫の姓」でミュラー・シュミット、夫は「自分の姓+妻の姓」でシュミット・ミュラーなど)も可能にしたり、両親の既婚・未婚に関わらず子どもにもダブルネームを選択できる権利を持たせたりと、自由な選び方を採り入れていきたい模様です。 ダブルネーム再導入と聞くと、まるで男女平等に向けた制度が後退したかのような錯覚をおぼえますが、実際にスイスで検討されている内容を見ると、しわ寄せの来ていた女性と子どもの権利にしっかり配慮しつつも、誰もが不利益を被らないような方向に、試行錯誤しながらも着実に歩を進めているように見受けられます。 日本でも長らくテーマとされつつ遅々として進まない選択的夫婦別姓議論ですが、他国の成功と失敗の中から自国に合ったものを柔軟に採り入れ、多様化する世情に対応したシステムを構築し、誰もがアイデンティティを謳歌(おうか)できる社会になればと願います。 この記事の筆者:ライジンガー 真樹 元CAのスイス在住ライター。日本人にとっては不可思議に映る外国人の言動や、海外から見ると実は面白い国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説を中心に執筆。All About「オーストリア」ガイド。
ライジンガー 真樹