全面新設計のロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」 旧車的で牧歌的な資質は維持しているのか?
旧車&旅好きにとって理想的な特性
ロイヤルエンフィールド初のアドベンチャーツアラーとして、海外では2017年、日本では2018年から発売が始まった「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」は、私(筆者:中村友彦)にとってはお気に入りの1台でした。 【画像】ロイヤルエンフィールド新型「HIMALAYAN」(2024年型)を画像で見る(17枚)
あのバイクの何が魅力的って、誤解を恐れずに表現するなら、1970年代後半に登場したヤマハ「XT500」やホンダ「XL500」に通じるフィーリングが味わえたことです。いや、ワイルドにして軽快な乗り味の2モデルを引き合いに出すのは、我ながらちょっと無理があるような気はしますが、旧車とツーリングが大好きな私の中では、「ヒマラヤ」はかなり魅力的な存在だったのです。 そんな「ヒマラヤ」は2024年型で2代目に進化し、新たな機構として水冷単気筒エンジンや電子制御式スロットル、モード切り替え機構、TFTメーターなどを採用しました。 初代に好感を抱いていた身としては、それらの新機構は微妙に腑に落ちないところですが、既存の「ヒマラヤ」の好セールスで明確な手応えを掴んだロイヤルエンフィールドが、動力性能向上を目指して最新技術を随所に採用したのは至って自然な流れ……だと思います。
初代との共通部品は、ほぼ皆無
2代目「ヒマラヤ」で、多くのライダーが注目しているのは、単気筒という形式を維持しながら、全面新設計となったエンジンでしょう。
新作エンジン最大の特徴は冷却方式を空冷から水冷に刷新したことですが、排気量を411ccから452ccに拡大したこと、動弁系をOHC2バルブからDOHC4バルブに変更したこと、ボア×ストロークが同社製単気筒では初のショートストロークになったこと(78×86mmから84×81.5mm)、圧縮比が高められたこと(9.5:1から11.5:1)なども、初代のエンジンとは一線を画する要素です。 最高出力と最大トルクに注目すると、初代が24ps/6500rpmと32Nm/4500rpmだったのに対して、2代目は40ps/8000rpmと40Nm/5500rpmです。つまり2代目のエンジンは、大幅なパワフル&トルクフル化を実現すると同時に、高回転高出力指向になったのです。 一方の車体に関しても、ほぼすべての部品が新作になりました。ひと目で認識できる初代との相違点は、ツインチューブタイプのフレームやテーパー形状のスイングアーム、倒立式フロントフォークなどですが(初代のフレームはセミダブルクレードル、スイングアームはストレートで、フロントフォークは正立式)、リンクを上部に移設したリアサスペンションや、高さ調整機能(825mm/845mm)を備える前後分割式のシート、スポークの構成を改めた前後ホイール、シャープな印象になった外装部品なども新規開発です。 そんな2代目の日本市場での価格(消費税10%込み)は、チューブタイヤ仕様が88万円、チューブレスタイヤ仕様が89万9800円で、初代の2023年型が70万6200円~だったことを考えれば、大幅な値上げが行なわれました。 とはいえ、市場でライバルになりそうなアドベンチャーツアラーは、ホンダ「NX400」(89万1000円)、KTM「390アドベンチャー」(89万9000円)、ベネリ「TRK502X」(96万8000円)でしょうから、全面刷新で現代的な進化を遂げた「ヒマラヤ450」の価格は、個人的には妥当ではないかと感じています。