新聞10紙を読んでも、得られるものが少ない…若き日の小泉進次郎氏がメディアと距離を取り始めた"苦い経験"
■オフレコなしでメディアと渡り合った父 「オン(レコ)」というのは政治家や記者がよく使う言葉で、オン・ザ・レコードの略だ。記者会見などで、記録・報道されることを前提に話すことをオン、記録や公表しないことを前提に話すのは「オフレコ」という。 記者はオフレコと約束して取材している際も、自身の備忘録のためにメモを取ったりレコーダーを回したりするケースがある。さらにその音声データや記録メモが外部に漏れることもある。 進次郎のこうした姿勢は、メディアの特性を熟知していた父・純一郎氏の姿を思い起こさせる。純一郎氏は、「小泉純一郎にオフレコなし」を当選1回のときから貫いたと言われている。つまり、「話したことは何でも書いていい、書かれたくないことは話さない」というスタンスだ。 その後、総理になった純一郎氏は、当時では画期的だったメールマガジン「らいおんはーと」や一日2回のぶら下がり取材などで、継続的に国民に向けて「オン」で情報発信した。進次郎は、父・純一郎氏と同じ「オフレコなし」のスタンスで、メディアと渡り合っていのだ。 ■小間使いのような総理の番記者に苦言 進次郎は2018年4月11日に行われた新経済連盟(※主にIT企業などが参加する経済団体)が主催するイベントで、総理の番記者のあり方についても持論を披露した。 「新入社員を総理の番記者にするのをやめたほうがいい。世界のどこで新人がその国の最高権力者の番記者をやりますか。アメリカの大統領のプレスコンファレンス(記者会見)で質問する人は限られているんです。 あの重鎮の(記者の)方が手を挙げたということに、政治家側も敬意を持ちながら、『さあ、どんなことを突かれるか』と。そういう健全な緊張感のある関係があるべき姿だと思います。僕ら政治家だって総理に話を聞く機会は限られます。記者は権力者に一番近い。 なのに、質問するチャンスがあっても、聞く内容はデスクとかから、『これを聞いてこい』と言われていることを聞く。これだったら意味ないじゃないですか。だから私は報道機関の方と会うたびに、『一番変えてもらいたいのは、総理の番記者を経験のある政治の知識を持っている方にやってもらえないですか』と言います。 しかし(報道機関の方は)、『いやあ、総理についていくのは大変だからね』と言ったんですよ。総理、何歳ですか? 60歳超えているんですよ。こう考えたときに今の(番記者の)あり方というのは、もう一回考え直すことが必要だと思いますね。圧倒的に大事なことです」 至極、正論である。 進次郎は今、政治だけでなく、メディアのあり方にも一石を投じている。 ---------- 鈴木 款(すずき・まこと) ジャーナリスト・フジテレビ解説委員 北海道函館市生まれ。神奈川県立小田原高校、早稲田大学政治経済学部卒。農林中央金庫を経て、1992年フジテレビに入社。政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現在解説委員。教育、人権問題をライフワークとして取材。FNNプライムオンライン、教育新聞、東洋経済オンライン他で執筆中。2022年、第4回ソーシャルジャーナリスト賞受賞。著書に『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』(扶桑社新書)、『日本のパラリンピックを創った男 中村裕』(講談社)、『日経電子版の読みかた』(プレジデント社)、共著『世界標準の英語の学び方』(学陽書房)、編書『日本人なら知っておきたい 2020教育改革のキモ』(扶桑社)。大学でメディアリテラシー、ジャーナリズムの講義を行う。映倫の次世代への映画推薦委員。はこだて観光大使。趣味はマラソン。2017年にサハラ砂漠マラソン(全長250キロ)を走破。2020年早稲田大学院修了。 ----------
ジャーナリスト・フジテレビ解説委員 鈴木 款