<IS拘束事件>海外での情報収集能力 日本の実力は? 軍事ジャーナリスト・黒井文太郎
2月1日、過激派組織「イスラム国」(IS)は拘束していたジャーナリスト・後藤健二氏を殺害した動画をネットに公開しました。もう一人の人質だった湯川遥菜氏とともに脅迫動画がネットに公開されたのは1月20日。日本中がその安否を気遣い、なんとか助かって欲しいと願ってきましたが、最悪の結果となりました。ではその間、日本政府はどのような対応をしていたのでしょうか。
1月20日の「動画」公開までの動き
1月27日に菅官房長官が明らかにしたところによると、日本政府は湯川氏拉致が発覚した後の昨年8月16日に、在ヨルダン日本大使館内に現地対策本部を設置し、翌17日に総理官邸内に情報連絡室、外務省内に対策室を設置したとのこと。その後、11月1日にこれらの対策部局に後藤氏の案件も加えたとのことです。 在ヨルダン日本大使館に現地対策本部を設置したのは、現在、在シリア日本大使館が閉鎖され、その機能が在ヨルダン日本大使館に移設されていたからです。それ自体は適切な措置といえます。 その間、日本政府がどのような活動をしていたのかは不明です。イスラム国側と直接交渉があったかどうかもわかりません。今回脅迫動画が公表された後も、政府は直接の交渉はないとの見解を示し続けていましたが、ことは誘拐事件であり、必ずしも情報を公開すべきものではありませんから、真相はわかりません。 推測ですが、おそらく日本政府は関係各国に協力は求めたでしょう。ヨルダン、トルコ、アメリカなどです。シリアのアサド政権にも接触したかもしれませんが、日本政府とアサド政権は断交状態にありますので、実際のところは不明です。 ただし、どれほど力を入れて情報収集や交渉の試みを行っていたかはわかりません。少なくとも、イスラム国の一部勢力に人脈のあるイスラム法学者の中田考氏、ジャーナリストの常岡浩介氏に協力を求めたことは、なかったようです。
情報収集能力は日本の弱点
その後、1月20日に最初の脅迫動画が公表され、事態はいっきに緊迫しました。日本政府はこの時点から、本格的に対応を迫られることになります。同日中に外務省と首相官邸に対策室が設置され、中山外務副大臣がヨルダンに派遣されて、現地対策本部の指揮をとることとなりました。