“スピンロフト”がなぜ大切なのか 日本初の「アプローチ専門コーチ」永井直樹が解説 (後編)
――旧来の「右に置いてつぶす」だと、スピンロフトが確保できない? ボールが右だと、上からは打てますがダイナミックロフトが取れないんです。そうするとスピンロフトも小さくなるので、低く出てスピンが少ない球になりやすいということになります。ならばと、ボールを左足寄りにずらしていくと、ダイナミックロフトは増えますが、今度は入射角が浅くなって、こちらも思ったほどスピンロフトが増やせないことが起こります。 これを解決するのがローポイントのコントロール。前回お話ししたみたいに、左足つま先と胸を開いて、ローポイントをボールの先に持っていくことで、左足寄りに置いたボールに対して、ロフトを寝かせたままダウンブローに打つことができるので、スピンロフトも確保できるというわけです。上手い人は、ダウンスイングで自分自身がさらに左に移動しながら打つことで、さらにローポイントを左にずらしつつ、ダウンブローの入射角で打っています。
――「ボールの手前からソールを滑らせる」というのがアプローチのコツというレッスンもありますが それも間違いではないです。あくまで「ツアーチップ」の場合は、強めのダウンブローで、地面より先にボールにコンタクトすることを重視しているというだけなんです。実際、日本の選手の場合は、アプローチが上手い人(プロ)でもローポイントが右の人はかなりいます。これは、コースの芝質や練習環境(練習場マット)の影響が大きいと思っています。日本のコース(のフェアウェイ)に多い高麗芝は、ボールが少し浮いた状態になるので、ローポイントが右でもボールの下にリーディングエッジを潜り込ませる余裕があります。 感覚が鋭敏なプロであれば、微妙な“刃”の高さのコントロールは可能でしょう。ただ、ローポイントが左にあるほうが、いろいろな球質を打ち分けたり、世界の多様な芝質に対応がしやすいというのは間違いないと思います。