これからの大人の男性美容のキーワードは「若返り」と「不老長寿」!?
きれいが目的になってしまった人生なんてつまらない
── それは、楽しみなような怖いような(笑)。とても興味深いです。最後に、今回は「美しい人へ」という特集の中でお話を伺っているのですが、斎藤さんご自身は、新しい時代の「美しい人」とはどういった人だと思いますか? 齋藤 新しい時代というより、昔から感じていたことですが、私はただ顔の造作がきれいなだけの人を美しいとは言いたくないのです。美しくあることにすべてを懸けている人はもちろんきれいですが、他にも大切なものがある人の方が魅力的です。例えばオリンピックを見ていても、競技中は自分がどう見えるかなんてそっちのけですが、それでもなお美しい人には誰も敵わない。
他の例を挙げると、アメリカの大統領候補のカマラ・ハリス氏。彼女がアメリカの大統領になったら、また世界の美の基準が少し変わるのではないかと思います。あれだけ笑顔が美しい人はなかなかいませんし、とても優秀ですよね。日本人で言えば、脳科学者の中野信子さん。肩書きに留まらず、様々な側面を持っている方で活動も多岐に渡っていますが、それでいて美しい。美しさは後からついてくるものだと思うのです。 私は女性誌で美容担当の編集者だったのですが、当時はビューティの仕事をしながら、頭の中までビューティで一色なのはどうかなと、どこか美容から背中を向けている部分もありました。もちろん男性も同じで、お洒落であることは素敵ですが、鏡の前に立っている時間が長すぎる人は退屈です。美容に構っていないのに、カッコいい人はたくさんいるじゃないですか。それだけに没頭するよりも、あくまでもさり気なくやるのがセンス。若返りやきれいが目的になってしまった人生なんてつまらないですよね。
齋藤 薫(さいとう・かおる)
雑誌『25ans』の編集者を経て独立。日本における美容ジャーナリストの草分け的存在として、女性誌を始め様々な媒体で、美容や女性をテーマに多数の連載エッセイを執筆。執筆活動以外にも化粧品の開発、アドバイザーなども務め、業界内での信頼も厚い。著書に『大人の女よ! 清潔感を纏いなさい』『だから“躾のある人”は美しい』(ともに集英社文庫)など。
文/大塚綾子 編集/森本 泉(Web LEON) 写真/Shutterstock