「メルカリ」に突きつけられる経営改革…香港系投資ファンドが大株主に
夜中に3時間、猫を探すだけで7500円。スキマバイトアプリのTimee(タイミー)でこんな求人が躍ったのがつい11月頭のこと。「闇バイト」の求人による連続強盗が社会問題化する中、当然、闇バイト疑惑が持ち上がり、真偽は不明ながら求人は削除され、同社の小川嶺代表はX(旧ツイッター)での説明と謝罪に追い込まれた。 鹿島を常勝軍団に育てた強化責任者・鈴木満さんの退任に思うこと(2021年) すると今度は21日にメルカリが、タイミーと同種のサービス「メルカリハロ」に関し、求人掲載の審査と監視体制の強化を発表した。 タイミーは9月に累計ワーカーが900万人を突破、これを追うメルカリハロは、10月に800万人を突破するなど肉薄している。そんなメルカリだが、順風満帆とはいえない。 「今後、メルカリは会社の経営方針で大きな転換を強いられることになるかもしれません。というのも、11月13日に香港系投資ファンドのオアシス・マネジメントが5.37%で、同社の第3位の大株主となっていたことが判明したからです。ただ、8月時点ですでに3%台の株式を保有していたので、いよいよ報告義務のある5%以上の大株主に乗り出してきたかとの市場の受け止めではありますが」(証券会社社員) ■業界再編の陰の主役 オアシスといえば、「もの言う株主」の中でも特に会社側に強い要求を行うことで知られる。かつては東京ドームを三井不動産に買わせたり、ドラッグストアの複数社の株を保有し、業界再編の陰の主役を演じるなどした。今年2月、7100億円で国内最大となった大正製薬のMBOでは、買い取り価格が「不当に安すぎる」として声を上げ、今後の訴訟での対立は不可避とみられている。 では、そんなオアシスが登場したことで、メルカリはどんな要求を強いられるのか。 「考えられるのは、アメリカ事業からの撤退です。メルカリは13年の創業後、1年足らずでメルカリUSAを創設して成長の柱に据えていました。ところが投資がかさんだ一方で、浸透はいまひとつ。現在も取引高は2四半期、売り上げ収益で3四半期連続でマイナスの落ち込みです。これを受け、同社では山田進太郎社長が来年1月からアメリカ事業のトップを兼任するとしていますが、より大きな傷口となりかねません。ただ国内も取引高、売り上げ収益共に減少傾向なので、メルカリハロのような新規事業にしか伸びしろが見いだせません」(同前) 同時に考えられるのが、鹿島アントラーズの売却だという。というのも、やはりオアシスが大株主となったDIC(旧大日本インキ)では、川村記念美術館の来年3月をもっての休館を発表しているからだ。同美術館は大日本インキ創業家の川村一族の収集品を収蔵展示、現代美術の抽象絵画の展示で知られた美術館。オアシス側が収益性の低さを問題視したとみられている。 アントラーズを顧みれば、コロナ禍後も2期連続の赤字で、メルカリが19年にクラブを買収して以後、タイトルとは無縁。オアシスが「無冠の帝王」をこのまま許しておくとも思えないのだが。 (ジャーナリスト・横関寿寛)