“牛飼い”になった元Jリーガー「おそらく自分だけ」 異例の転身…果たしたいサッカー界への貢献【インタビュー】
「おそらくJリーグ元年から、自分と闘莉王さんだけだと思う」
「牛飼い」と聞けば、おそらく多くの人が「牛を飼う人だな」と、なんとなくイメージすることができるだろう。だが、Jリーグのピッチに立ったプロのサッカー選手が現役を引退したあとにセカンドキャリアで選ぶ職業としては、極めて珍しい。2018年にJ3福島ユナイテッドFCで現役を引退した平秀斗(ひら・しゅうと)氏は、家業を継ぐ形で「牛飼い」となった。平氏は「おそらくJリーグ元年から、現役を引退した選手で自分とブラジルに戻っている闘莉王さんだけだと思う」と、その特殊性について語った。 【実際の様子】月給10万円で生活苦…“牛飼い”に転身した平秀斗の姿 「牛飼い」の仕事は、平氏の先祖が代々やっていたものであり、祖父と祖母が引き継いでいたという。サラリーマンとして企業で働いている平氏の父が名義を引き取り、祖父母に仕事を依頼する形をとっていた。20代のうちに引退し、セカンドキャリアを歩むことになった平氏は、この事業を継承し、自身も「牛飼い」としての人生をスタートさせた。 「自分が入って会社を作って、父や叔父さんが退職した後にも働ける場所を作るのも面白いなと思ったんです。それで『株式会社ひらふぁーむ』として法人化しました。サッカーしかやってこなかったので、会社経営のやり方とか、何も分かっていなかったのですが、やりながら学んでいる感じです」 牛飼いには、大きく分けて3つのパターンがあるという。1つ目は、子牛を生ませて子牛を売る牛飼い。2つ目は、子牛を買って食肉になるまで育てる牛飼い。そして3つ目が、子牛を生ませるところから食肉になるまで育てる一貫経営の牛飼い、だ。平氏の会社は1つ目の、繁殖をメインにしているという。「牝牛を数十頭そろえ、凍結精液を使って人工授精させて子牛を生ませ、交渉して子牛を売る」というのが、非常に大まかな仕事の流れだという。 当然、牛は生き物であり、冬眠もしない。そのため365日、目を離すことができない。牝牛は年間に1頭、子牛を生む。平氏の牛舎では65頭の母牛がいるため、ほぼ1週間に1頭は子牛が生まれる計算だ。生まれた子牛は、約8か月育て、250キロから300キロになるとセリに出す。朝の7時から9時まで、そして14時半から16時半までの餌やりが日常の軸にあり、お産となれば、深夜であっても牛舎に向かわなければいけない。