“牛飼い”になった元Jリーガー「おそらく自分だけ」 異例の転身…果たしたいサッカー界への貢献【インタビュー】
牛飼いの大変さ「朝が早く、夜中でも(牛舎に)行かないといけないのは苦痛でした」
「牛飼いになって大変だったのは、時間的にほぼ休みがないこと。あとは朝が早く、夜中でも(牛舎に)行かないといけないのは苦痛でしたね。お産がありそうとなると、いつでも準備していないといけないですし、友達との予定も立てにくくなるので」 そうした環境を変えるために、平氏はテクノロジーを導入した。サッカー界でもテクノロジーが発展してVARが導入されるなどの変化が起きているが、牛飼いの世界でもテクノロジーの発展が業界を変えているという。 「今は、センサーを牛の体内に入れていて、それでお産が始まりそうになると、スマホに通知が来るんです。さらに牛舎には監視カメラもつけているので、本当にお産が始まる直前までは家にいることができるようになりました。祖父母は昔の人ですから、そういうことはやっていませんでしたが、周りの人に聞いてそういうのがあることを知って導入しました」 現在は平氏の祖父母に加え、会社を早期退職した母も社員として働き、サラリーマンをしている父や叔父も会社が休みの土日には仕事を手伝ってくれている。それによって生まれた時間を使って、平氏はサッカー教室を行うなど、前回の記事でも紹介した自身の活動に充てている。 ちなみに牛は、主に藁を食べる。藁というのは、稲や麦の茎を乾燥させたものだが、その藁を作るために平氏の家族は稲作も行っている。「田植えもします。米を作るのが目的ではないので、お米はうちでも食べますが、余ったお米は高校のサッカー部に寄付をしたりしています。だから、いろんな機械に乗りますよね。トラクターにも乗りますし、そういう免許も現役を引退してから取りに行きました」。 先に挙げた凍結精液を使った人工授精も準国家試験となる免許が必要であり「車の免許が4つ、『人工授精師』の免許、あとは牛の爪を切る『認定牛削蹄師』の免許の計6つ」を、現役引退後に取得したという。今後も「受精卵移植師」の資格などを取得していく考えだ。 「そういう資格を持っている人はたくさんいるんです。でも、高齢の方が多いので、今取っておけば、そういう需要があるのかなと思っています。みんな農業大学に行って資格を取るのですが、セカンドキャリアで始めて資格を取っている人は珍しいかもしれません」 牛飼いとなった今、トライアウトでの経験が大きく生きていると平氏は言う。