ザインがエッジAI開発支援を強化、ワンストップで
エッジAI(人工知能)採用のニーズは拡大しているが、内製化には高度な専門知識が必要となるなど、導入に課題を感じる企業も多い。こうした企業のニーズに向け、ザインエレクトロニクス(以下、ザイン)が新たな一手を打ち出した。同社は2024年12月9日、エッジAI機器開発に必須となるハードおよびソフトをまとめて提供する「ワンストップ・ソリューション」の提供開始を発表。カメラを用いたエッジAIにおいて要となる画像データの高速伝送や画像処理技術をはじめとした独自技術/ノウハウを生かし、事業拡大を図る。 EdgeAI-Linkワンストップ・ソリューションの構成図[クリックで拡大] 出所:ザインエレクトロニクス
AI分野への取り組みを強化するザイン
高速インタフェースや画像処理用LSIを展開する「LSI事業」で高いシェアを有するザインだが、2018年にはIoT(モノのインターネット)/M2M(Machine to Machine)機器などを開発する「キャセイ・トライテック(2025年7月にザイン・モバイルテックに社名変更予定)」を買収。同社を中核とし、AI/IoTソリューションを提供する「AIOT事業」にも注力している。 同社は2024年6月、データサーバの開発/提供を手掛ける中国のHuaqin Technology(HQ)と合弁で子会社「ザイン・ハイパーデータ」を設立し、NVIDIA製GPU搭載AIサーバなどを提供する「サーバ提供事業」にも参入。LSI、AIOT、サーバ提供事業を3本柱として事業を展開し、次期中期経営戦略「Innovate100」(2025~2027年度)では2027年度に連結売上高100億円以上を目標としている。 同社は次期中期経営戦略において、これら3事業の展開を通じ「AIの社会実装の加速と、それによる経済社会の生産性向上に貢献していく」と方針を掲げていて、今回発表したソリューションもそのうちの1つだという。
顧客の開発期間を大幅に短縮
今回、ザインが発表したのは、エッジAI機器を開発する顧客をワンストップでサポートする「EdgeAI-Linkワンストップ・ソリューション」だ。Qualcomm製のNPU(Neural Processing Unit)付きシステムLSIを搭載したスマートモジュールを中心に、エッジAI機器開発に必須となるハードおよびソフトウェアの構成要素をまとめて提供する。これによって顧客の開発期間を大幅に短縮し、トータルコストを抑制。同社は「小型で価値の高いエッジAI機器を短い開発期間で構築できる」と強調している。 ザインによると、例えばメーカーの顧客などからは、工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとした際、「多くのIT企業は『データをいただければ全て解析します』というが、そもそも現場のデータ化がうまくいかない」といった悩みを多く聞くという。 カメラおよびディスプレイ用の高速伝送技術はもちろん、「AIプロセッサと接続して当社のSerDesを活用するというケースが国内外で非常に多い」(同社)ことから深い知見を備えているというザインは、今回、同社の強みを生かしたボードソリューションを提供することで、これらの課題に対応可能だとしている。 説明担当者は、「AIプロセッサでは、圧縮したデータではAIの識別率が落ちるため、非圧縮でスマートに伝送できる技術が求められる。これは当社が得意にしてきた技術だ」とも説明。同社の培ってきた技術/ノウハウを生かしたエッジAI開発サポートが可能だとした。ザインが開発し、4K/8Kテレビなど高解像度ディスプレイ内部情報伝送においてデファクトスタンダードとなっている高速インタフェース技術「V-by-One HS」では、4Kの画像を1本のケーブルで伝送可能で、さらに同じケーブル上で制御信号も伝送できるなどの特長がある。