なぜ過酷?メダルが期待される卓球の東京五輪日本代表選考レースの現状を考察してみた
東京五輪の開幕まで1年を切った。卓球はメダル獲得が有力視される競技のひとつだが、五輪の大舞台を目指す選手たちは、その前の厳しい代表争いを勝ち抜かなければならない。ベテランと若手がともに活躍する日本の卓球界では今、かつてないほど過酷なサバイバルレースが繰り広げられている。その現状と、この8月から後半戦に入っている代表選考の流れを整理してみたい。 卓球の日本代表は男女とも2020年1月6日に日本卓球協会(JTTA)から発表される。代表枠は男女3つずつ。2020年1月発表の国際卓球連盟(ITTF)世界ランキングで日本人の上位2人が個人戦(シングルス)と団体戦のメンバーに内定する。 そして、もう1人は団体戦要員として他2人とのダブルスのペアリングを考慮し、協会の強化本部推薦で決まる。この3人目の世界ランキングの条件は選考基準に明記されていないが、個々の世界ランキングが団体戦のシードを左右するチームランキングに影響するため軽視できない。ちなみに卓球の団体戦は最初にダブルス1本、その後シングルスを最大4本行い、先に3本取ったチームが勝ちとなる。 代表争いが熾烈なのは女子だ。わずか3つの椅子を6、7人で競っている状況で、世界ランキングトップ10内の石川佳純(全農)、伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(日本生命)が頭一つ抜けているが、安泰かといえばそうとも限らない。その主な要因は世界ランキングを決めるポイントシステムと東京五輪で五輪初採用となる団体戦の新方式にあると見る。 ポイントシステムの観点では、まず、2019年8月1日発表の最新世界ランキングで石川が日本人最上位の6位(13133ポイント)、2番手に8位の伊藤(12710ポイント)、3番手に10位の平野(12050ポイント)が続くが、代表選考の対象期間である今年12月末までに獲得ポイントの高い大会がいくつか控えており、そこでの結果次第で上位3人の順位は入れ替わる可能性がある。例えば10月に中国で開かれる女子ワールドカップは五輪と世界選手権に次いでポイントが高く、これに出場する石川と平野にとっては大量得点のチャンスだ。それに対し伊藤には出場権がない。 ところがこの3人には世界ランキングからは見えてこないもう一つの順位がある。それは代表内定選手が発表される2020年1月時点の世界ランキングの有効ポイントを合算した場合の順位だ。世界選手権など特定の大会を除き、卓球競技のポイントの有効期限は1年間で、期限を過ぎると消滅するポイントがあるため、それらを合算するとトップは伊藤(10370ポイント)、2番手に平野(9590ポイント)、そして3番手になんと石川(9405ポイント)という順に入れ替わる。世界ランキングでは日本人最上位の石川が実質的には伊藤と平野を追う形になっているのだ。