なぜ過酷?メダルが期待される卓球の東京五輪日本代表選考レースの現状を考察してみた
では、男子の代表争いが楽かといえば、そうではない。やはり個人戦の2枠をめぐる戦いは熾烈で特に2枠目を争う丹羽と水谷は拮抗している。 「きついですね。リオの時は張本がいなかったので、僕と水谷さんで個人戦の2枠を取ることができた」と話すのは丹羽。 だが張本とて五輪代表争いを経験するのは初めてとあって、その重圧は並大抵ではない。その証拠に昨年までは事あるごとに「東京オリンピックで金メダル」と豪語していた若武者も今年に入ってから、ブルガリア・オープンで優勝するまで思うように結果を出せず、強気なコメントもトーンダウンしていた印象がある。 張本に限らず選手たちの疲労の色は一様に濃い。 代表争いの緊迫感の中で驚くほど過密な大会スケジュールをこなさなくてはならないからだ。卓球の大会は連戦に次ぐ連戦で、五輪代表選考レースの後半戦に入る8月もワールドツアー2連戦の翌週に国内でTリーグ2シーズン目の開幕戦。9月から10月にかけてはアジア選手権とT2ダイヤモンド第2戦、さらにワールドツアー2連戦と女子ワールドカップおよび男子ワールドカップまで毎週大会が続く。これでは選手たちに休む暇はない。それでも少しでも多くポイントを稼いで世界ランキングを上げるため転戦を避けては通れない。 五輪に出場しメダルを獲れば、その後の人生が大きく変わる。本来であれば夏休みを満喫しているだろう高校1年生の張本やティーンエイジャーの伊藤、平野らが「命がけで」「死ぬ気で」と切迫した言葉を口にするのも無理はない。運命の東京五輪日本代表発表まであと5か月、過酷なサバイバルレースは否応なしに加速していく。 (文責・高樹ミナ/スポーツライター)