北海道の日高・十勝を鉄道とバスで巡る。「日勝半島物語きっぷ」で馬と生きる北の大地へ
北海道の日高・十勝地方は歴史的に馬との結びつきが深い地域だ。開拓期の労働力として苦労を共にした農耕馬は、後に「ばんえい競馬」に発展。明治時代に御料牧場(宮内庁直轄の牧場)が置かれた日高地方は、日本一の馬産地へと成長。ここで生まれた名馬は枚挙にいとまがない。 日高・十勝に根付く馬の文化に触れるなら、JR線とバスでこのエリアを周遊する「日勝半島物語きっぷ」が便利だ。まずは札幌駅から苫小牧(とまこまい)駅まで千歳線に乗り、苫小牧駅前からは高速バス「特急とまも号」で、一気に優駿の里・静内(しずない)を目指そう。 苫小牧駅前から乗車したバスは、日高自動車道をひた走る。鵡川(むかわ)ICを通過すると、道路の両側に緑豊かな牧場が広がり始めた。道路のすぐそばでのんびりと草を食む馬や、春に生まれたとおぼしき子馬が母馬の後をついて歩く姿が見える。行き交う車の中に「競走馬輸送中」と書かれたトラックを見かけ、日高にやって来たという実感が湧いてきた。 日高厚賀(あつが)ICを出て、右手に広がる太平洋を眺めていると、国道沿いに線路が見えてきた。かつて苫小牧―様似(さまに)駅間を結んでいたJR日高線の廃線跡だ。 【写真】ロース肉の豚丼とバラ肉のおにぎりが楽しめる帯広駅の名物駅弁
日高線は2015年の高波被害により鵡川―様似駅間が不通となり、21年に同区間が廃止された。海岸すれすれに線路が敷かれていた跡もあり、当時はオーシャンビューの鉄道旅が楽しめたことだろう。廃線は寂しいが、太平洋と廃線跡を眺めながらの移動はバス旅ならではの楽しみとも言える。 新冠(にいかっぷ)の牧場風景を後に太平洋沿岸を進むと、この日の宿がある静内(新ひだか町)の街が見えてきた。競走馬のせり市も開かれる静内は、馬産地・日高の中心地だ。町内の小学校では乗馬や馬産業に親しむ授業があり、静内農業高校では全国の高校で唯一、競走馬の生産が行われている。町営施設「ライディングヒルズ静内」で旅行者も気軽に馬と触れ合えると聞き、体験乗馬にチャレンジ。馬の温かい背中に揺られるひとときは、旅の思い出となった。