北海道の日高・十勝を鉄道とバスで巡る。「日勝半島物語きっぷ」で馬と生きる北の大地へ
“背骨”を越え、ばん馬の故郷・十勝へ
2日目は静内からのんびりと路線バスで襟裳岬を目指す。様似で乗り換え、夕方に到着。荒波に削られた岩礁が海へと連なる岬の風景が、最果てにたどり着いたことを物語る。海を真っ赤に染める夕日、刻々と空の色が変わるマジックアワー。夜は降ってくるような星空を灯台の光が照らし、黎明には朝日が海上で輝く。「襟裳の春は何もない」と歌う名曲もあったが、とんでもない! ここにはどこにもない絶景が雄大に広がっていた。
3日目は路線バスで北海道の“背骨”日高山脈を越える。えりも町と広尾町を結ぶ国道336号は、建設に黄金を敷き詰めるほどの莫大な費用を要したことから「黄金道路」と呼ばれている。海岸ぎりぎりに迫る断崖絶壁に、歴史的難工事の苦労がしのばれる。 広尾でバスを乗り換えると、海から平原へ、車窓の景色が一気に変わった。広大な牧場から物珍しげにこちらを見ている牛たち。酪農王国の十勝らしいのどかな風景だ。 昼過ぎに帯広駅に到着し、帯広競馬場へ向かう。目当てはもちろん「ばんえい競馬」だ。開拓期に行われていた農耕馬の力試しが発祥で、1トン超の大型馬「ばん馬」が重りを載せた鉄ソリを引いて力と速さを競う世界唯一のレースだ。200メートルの直線コースに二つの障害があり、手綱さばきや駆け引きが勝負を分ける。スタートで遅れた馬が障害越えで一気に巻き返したり、スタミナ切れの馬がゴール目前で止まってしまったり、最後まで目が離せない展開が楽しめる。 日高のサラブレッドから十勝のばん馬まで、人馬一体で発展してきた北海道の馬文化を体感した3日間。帰路は列車でくつろぎながら、旅の思い出を反すうしよう。 文/佐々木美和 写真/川村 勲 日勝半島物語きっぷ 9600円 日高・十勝エリアをJR線とバスで周遊できる。札幌―苫小牧は千歳線、札幌―帯広は千歳線・石(せき)勝(しょう)線経由。新得―新夕張で乗降の場合は特急利用可。帯広―広尾は十勝バス、広尾―静内はジェイ・アール北海道バスに片方向のみ乗降フリー。えりも・静内―苫小牧は高速バス「特急とまも号」を利用できる。4日間有効。 ■期間 11月24日まで(発売は11月21日まで) ■問い合わせ JR北海道電話案内センター/電話011・222・7111 ■バスに関する問い合わせ ジェイ・アール北海道バス様似営業所/電話0146・36・3432、十勝バス本社/電話0155・37・6500 ※「旅行読売」2024年7月号の特集「フリーきっぷであの駅へ」より