漢方にも副作用があるの? 注意すべき飲み合わせや自分に合った漢方薬の選び方を解説
安全な漢方薬の使用法
編集部: 安全に漢方薬を使用するにはどうしたら良いのでしょうか? 岩崎先生: まずは薬の飲み合わせに気をつけることです。とくに高齢者の場合、慢性疾患を複数抱えていることも多く、薬の相互作用や飲み間違い、飲み過ぎなどによって体にトラブルが起きることがあります。これをポリファーマシーといいます。 日本老年医学会や日本老年薬学会の発表によると、高齢者の場合、処方される薬が6つ以上になると、副作用を起こす人が増えるとされています。そのため飲み薬は5つ以内に抑えることが必要です。 編集部: そのほか気をつけることは? 岩崎先生: 漢方だから体にやさしいといって、規定量を超えて服用してしまう人も多いのですが、そうしたことも副作用のリスクになります。また、市販薬のなかにも漢方を含むものがあり、自己判断で選択すると体質に合っていないものを選ぶ可能性もあります。 同じ症状でも体質によって選択すべき漢方は異なるので、必ず専門医に処方してもらうようにしましょう。 編集部: 注意して使わないといけないのですね。 岩崎先生: それから長く使うことによって体の負担となり、トラブルを引き起こす漢方もあります。たとえば大黄は便秘などに用いられる漢方ですが、長く飲み続けると耐性ができて、効かなくなります。 この時は一時的に酸化マグネシウムなど別の下剤に数ヶ月変更すると、また効果が出るようになります。 編集部: 医療機関で漢方を処方してもらいたいときは、どうすれば良いのですか? 岩崎先生: 最近では多くの医師が漢方も処方に取り入れていますが、より専門的な診察を受けたいなら、漢方内科や漢方外来を標榜している医療機関を訪れると良いでしょう。 たとえば、日本東洋医学会が認定する漢方専門医は指定の研修を受けており、厚生労働省からも「漢方専門医を標榜しても良い」と認められています。 編集部: ほかに、漢方に詳しい医師を見分ける方法はありますか? 岩崎先生: たとえば漢方薬を処方するとき、「両手の脈を見る」「舌を観察する」「お腹を触る」といったことを行う医師は、漢方に詳しいと判断しても良いと思います。これらは伝統的な漢方の診察方法であり、漢方薬を正しく処方するには必要であるためです。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 岩崎先生: 漢方を服用することで副作用が生じることもありますが、気をつけたいのは、漢方薬による副作用と漢方についてあまり知識がない医師が処方することで生じる有害事象とでは、意味合いが違うということです。 たとえば甘草は補中益気・抗炎症・鎮痛・去痰・鎮咳作用などがあり、多くの漢方で処方されるだけでなく、市販の風邪薬などにも用いられています。 しかしその一方、甘草を知らない間に大量摂取することにより高血圧やむくみなどを引き起こすことがあり、この状態を偽アルドステロン症といいます。 甘草を服用すると低カリウム血症になりやすいので、これまでは定期的に血中カリウムを測定して、体に害が生じていないか確認するのが一般的でした。 しかし現在ではそれだけでは不十分で、甘草を含む漢方を服用していて血圧が上がってきたら、カリウムの数値が正常だろうとすぐに甘草の服用を中止し、血圧の低下やむくみの改善が見られるか確認しなければなりません。 ですが、こうした正しい知見を持たず、旧来の方法で漢方を処方するケースも見られます。漢方を処方してもらう際には、必ず漢方に詳しく信頼できる医師を選択することが、何よりも重要です。