漢方にも副作用があるの? 注意すべき飲み合わせや自分に合った漢方薬の選び方を解説
天然の成分から作られるため、「漢方薬には副作用がない」と考えている人もいるのではないでしょうか? しかし実は、なかには副作用を持つものもあるのです。飲み合わせの注意点や漢方薬の選び方などについて、あゆみ野クリニックの岩崎先生に教えてもらいました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
漢方には副作用があるのか?
編集部: 漢方は安全で体にやさしいというイメージがありますが、副作用があるのですか? 岩崎先生: はい。漢方薬は西洋医学の薬と違って副作用がないというイメージを持っている人も多いと思いますが、実際には、漢方薬にも副作用があります。 編集部: 漢方にも副作用があるのですね。 岩崎先生: はい。植物の葉、茎、根などや鉱物、動物の一部などのうち、薬効作用があるものを生薬といいますが、漢方はこの生薬を単体で、あるいは組み合わせることで構成されています。 この生薬はさまざまな薬理学的作用を持っており、それが副作用として出現する場合があります。 編集部: 生薬には薬理学的作用がある一方で、副作用を示すこともあるのですね。 岩崎先生: そのほか漢方を処方する際には「証」といって、その人の体質や体力、症状などを総合的に示すものを正しく見極めることが必要です。 この証の見立てに誤りがあると、その人に適さない漢方を処方することになり、害が生じるリスクがあります。この場合は見立てが誤っているので副作用とはいえませんが、薬の服用により健康を害するリスクがあることは覚えておいてほしいと思います。
漢方による副作用にはどのようなものがあるのか?
編集部: 漢方ではどのような副作用が起きるのですか? 岩崎先生: たとえば有名なものに「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方があり、これによる肺障害(間質性肺炎)が相次いで報告されたことがあります。なぜこうしたことが起きるのかというと、小柴胡湯には「黄芩(おうごん)」という生薬が含まれているため。 黄芩は単独でも間質性肺炎を起こす危険性がありますが、以前慢性ウイルス性肝炎の治療に用いられたインターフェロンと併用することで、そのリスクが高まるとされています。 ただし、黄芩はほかにもいろいろな漢方処方に含まれており、小柴胡湯に限らず黄芩を含む処方は間質性肺炎を起こす可能性があります。 編集部: ほかにはどのような副作用がありますか? 岩崎先生: それから、漢方エキス製剤の7割に処方されている「甘草(かんぞう)」にも注意が必要です。甘草を長期で服用する、あるいは過量に服用すると、偽アルドステロン症という症状を起こし、それに伴って高血圧、浮腫、不整脈などが引き起こされることがあります。 また、利尿薬の一種であるループ利尿薬と併用することで心不全が増悪するとされており、実際、死に至った症例もあるので注意が必要です。 編集部: 「漢方だから安心」というわけではないのですね。 岩崎先生: そのほかにも「附子(ぶし)」はトリカブトの根であり、毒性成分をわずかに残すことから、口周辺のしびれや不整脈、血圧低下、呼吸障害などを引き起こすことがあります。また「麻黄(まおう)」を過剰に摂取すると高血圧、幻覚、排尿障害などが起きることもあります。 それから、「大黄(だいおう)」や「芒硝(ぼうしょう)」は強力な下剤であることから、過剰に摂取すると下痢による脱水などを起こす可能性があるので注意が必要です。 編集部: 自分の証に合っていない漢方薬を飲み続けることも、体に害を及ぼすのですよね? 岩崎先生: もちろんです。たとえば漢方薬を服用して胃腸障害やじんましん、むくみ、倦怠感などが出現し、1週間以上症状が消えない場合には、その漢方が症状や体質にあっていない可能性があります。服用を中止し、医師に相談することをおすすめします。