主体的な社員ほど、最適なタイミングで「質のよい経験」をしている
組織やチームの成長、個人のキャリアを大きく左右する要素として、主体性が重要視されています。しかし、主体的な社員を育て、主体的なチームを創り、ビジネスを成功に導くためには単に社員一人ひとりに働きかければよい、というものではありません。 「管理職の罰ゲーム化」が加速する日本の職場...その原因とは? そこで年間300社を超える企業に対しビジネスコンサルティング&研修プログラムの企画・開発・実施までを行っている株式会社HRインスティテュート代表取締役社長の三坂健氏が、組織の強みや個性を活かし、企業風土や文化といった環境を整えながら、社員が主体的に活躍するチームを創る方法を3回に分けて解説します。 第3回の本稿では、人が育つチームに必要な「質のよい経験」について紹介します。
人が育つチームは「経験」の獲得を重視する
人が育つ条件を表したものとして有名な考え方が「70:20:10の法則」です。これは経営コンサルタントであるマイケル・ロンバルド氏とロバート・アイチンガー氏の研究によるもので、米国の様々な経営者を対象に「何がリーダーとしての成長に役立ったか」を調査したものです。 それによると、人は7割を仕事上の経験から学び、2割を先輩や上司からの助言やフィードバックから学び、残りの1割を研修などのトレーニングから学ぶというものです。 この考え方に基づくと、リーダーシップ育成の要素として最も重要なものは「経験を得ること」となります。そしてその経験をもとに先輩や上司と対話をすることで、自らの解釈と他社の解釈を照らし合わせ、新たな気づきを得て成長します。
単なる経験ではなく「質のよい」経験を目指す
ではこの「70:20:10の法則」をさらに深ぼって、人が育つチームに共通することは何かを見ていくと、それは「質のよい経験」が存在し、「質のよい対話」がなされている、ということになります。この「質のよい」という言葉は曖昧ではありますが、それは、 ・その人にとってちょうどいいタイミングで、 ・その人にとって受け入れやすく、 ・一方でその人にとって刺激がある。 というニュアンスを束ねた状態を意味しています。 みなさんにとって「質のよい経験」、すなわち自らの成長につながった経験とはどういうものだったでしょう? 例えば同じ本を読んだり、同じ経験を得たりしてもタイミングによってとても刺激となるときとそうでないときがあると思います。このように「質のよさ」とはその個人が置かれている状況によって異なります。