「異端の宰相」は荒野を目指す 多党政治元年、日本政界はどう動くか◇首相交代・政界再編の可能性は?
石破政権の命運を握る「世論の支持」
越年を果たした石破首相が「次の勝負」と位置づけるのは、25年7月予定の次期参院選である。就任時、1年以内に参院選が控えるのを承知で政権を担った首相は、戦後、延べ12人(人数は11人)いる。第1期の吉田茂、佐藤栄作、福田赳夫、宇野宗佑、宮沢喜一、村山富市、小泉純一郎、第1期の安倍晋三、鳩山由紀夫、第2期の安倍、岸田、石破の各氏だ。 そのうち、参院選前の辞任や参院選敗北で沈没したのは、吉田、宇野、第1期の安倍、鳩山の4首相だが、石破首相は5人目となるか。就任後1年以内の参院選を乗り切った残りの7首相は、例外なく最初の1年、参院選勝利を最重要テーマと見据えて政権運営を行い、続投に成功した。石破首相もその路線であるのは疑いない。 カギは支持率だ。時事通信の調査で、石破首相登場後の内閣支持率は、24年10月が28.0%、11月が28.7%、12月が26.8%だった。振り返ると、岸田内閣の発足1年後の22年10月から23年3月までとほぼ同水準である。 25年1月24日前後から通常国会が始まる。3月下旬の25年度予算の成立まで、このレベルを維持していれば、石破体制のままで次期参院選を迎える展開となると予想する。 逆に1月以降、10%台に落ちたりすると、自民党内で「石破首相では参院選は戦えない。首相交代を」という声が噴き出し、「石破降ろし、予算成立花道論、総裁選実施」を求める動きが党内世論になるに違いない。前回からわずか5カ月だが、その場面で 衆議院の再解散・総選挙という「破れかぶれ」の一点突破作戦も想定可能だ。といっても、石破首相に政治的パワーが残っている場合の話で、実際には確率は極めて低い。 むしろ「短命必至で在任半年が限界」と本人が自覚して花道に向かう可能性が高い。首相選び直しとなるが、少数政党並存のままで、次はどんな政権が生まれるか、予測は困難だ。 反対に、内閣支持率の下落回避または上昇気流で、石破内閣のままで参院選に突入するケースだと、首相が参院選を前にして、政権強化策で小技・大業を繰り出すことも十分、ありうる。国民民主党の正式な与党入り、日本維新の会との連携などの連立組み替え、第2党の立憲民主党との大連立政権の樹立プランも現実味を帯びる。 支持率に表れる民意がポイントとなるが、問題は石破首相の政権運営と政策運営の行方である。就任後の3カ月は、政権のかじ取りに懸命で、国民の目に映ったのは、石破首相の考えや方向性など、首相としての構えと立ち位置だけだった。政権の実績、成果、実効はほぼゼロで、それらはこれからの課題である。25年1月以降は、それがいや応なくはっきりしてくる。そこで石破首相の資質、力量、手腕など、政権担当者としての器も含めて、民意がどう判定するか。