「異端の宰相」は荒野を目指す 多党政治元年、日本政界はどう動くか◇首相交代・政界再編の可能性は?
夏の参院選は「大激動」の引き金になるか
石破首相の退陣か続投かは推測が難しいが、どちらにしても、次期参院選は自公連立政権には苦難の選挙となる。参議院は現在、自民党はすでに単独過半数割れ、自公両党の合計でも半数を16議席、上回っているだけだ。24年衆院選で自公の合計獲得議席(公認候補のみ)は、その前の21年衆院選と比べて計78減だった。25年参院選では、改選の自民党議員の中に裏金関係者が12人もいる。この状況を見ると、自公合計で獲得議席が17以上の減となる事態は容易に発生しそうな空気だ。 参院選の結果、参議院でも少数政党並存が現実となり、衆参で「緩やかな多党政治」が常態化すれば、おそらく25年後半は、本格的な政治大激動、同時に自民党や立憲民主党の液状化も含め、政党大再編が始まりそうだ。 議会制民主主義、基本的人権、自由主義経済、日米同盟など、基本的な枠組みを共有する各党が、それぞれ「軸と旗」を明確にして、民意のニーズをくみ上げる形で、政策など具体的な対応策が一致するグループによる連携・連立を目指す。それが「緩やかな多党政治」の真骨頂だ。緊張が激化する国際情勢の下で、「緩やかな多党政治」のような不安定・変動型政権は、諸外国との競争で対等に勝負ができるのか、と疑問を呈する声も噴出しそうだが、民意の支持が大きい政権は、見掛け以上に内実は安定・不動の政治体制である。自民党結党後、初の実験がスタートするかどうか。 一番の宿題は、石破首相や立憲の野田佳彦代表、維新の吉村洋文代表、国民民主の玉木雄一郎代表を含め、新しい政治を担える人材が政界にそろっているか否かだ。「戦後80年」の25年は、くしくも「多党政治元年」となる気配が濃厚だが、一方で、懸念材料は政治の世界の人材難と見る人は多い。ただし、逆の見方に立てば、伝統的な永田町の構造や体質に縛られない良質で有能な「政治新人類」が台頭する絶好のチャンスでもある。
【著者紹介】塩田 潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家、評論家。高知県出身。土佐高校卒業、慶応義塾大学法学部政治学科卒業。月刊「文藝春秋」記者などを経て、1983年に独立してノンフィクション作家。同年「霞が関が震えた日」で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。