植田総裁の記者会見からの示唆-正常化戦略の防衛
多角的レビューの活用
植田総裁は、かねて進めてきた金融政策の多角的レビューの成果について、12月の決定会合で議論した上で結果を公表する予定であると説明した。 レビューの対象期間を踏まえると、政策運営との関係で最も重要かつ難しいテーマは非伝統的政策の評価である。その理由は技術的には、終了してから日が浅いからだけでなく、依然として経済行動に影響を及ぼし続けていることにあろう。しかし、より大きな理由は日銀の説明が時間的な非整合性を生ずる恐れもある点だ。 それでも、多くの実務家が感じているように、非伝統的政策は局面によって有用であっても、常態化すべき手段ではないという理解を示すことは望ましい。そうした理解を共有することも、金融政策の正常化の合理性を支えることにつながりうる。 井上哲也(野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 チーフシニア研究員) --- この記事は、NRIウェブサイトの【井上哲也のReview on Central Banking】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
井上 哲也