【解説】来年?再来年?「103万円」引き上げ時期めぐる攻防…最低賃金VS物価 上げ幅でも隔たり
「103万円の壁」の引き上げをめぐって6日、自民・公明両党と国民民主党の税制調査会長による3回目の協議が行われた。 【画像】「103万円の壁」引き上げの前倒しが可能に?所得税や住民税の減税時期が早められる可能性も
最低賃金VS物価…上げ幅めぐる隔たり
給与所得者に所得税がかかり始める「103万円の壁」について、国民民主党は、最低賃金の上昇率をもとに、178万円への引き上げを主張している。 この日、与党側からは、物価上昇率を基準にする案が示された。具体的な水準の提示はなかったという。 消費者物価指数の上昇率を基準にする場合、食料品や生活必需品などの上げ幅でみると、116万円から140万円になるとの試算結果がでていて、自民党内からは「120万円あたりが妥当な数字ではないか」との声も上がっている。 仮に「103万円の壁」を120万円に引き上げるとすると、国・地方の税収の減少分は1.8兆円になると見込まれ、178万円に引き上げた際の見込み額7.8兆円よりは、大幅に抑えられることになる。 一方で、手取りの増え方は、178万円への引き上げのケースと比べて少なくなってしまう。 第一生命経済研究所の試算では、年収600万円の会社員の3人世帯で、配偶者のパート年収が103万円以下、子どもが中学生以下を想定した場合、178万円への引き上げだと、手取りは14.6万円増える見込みだが、引き上げが120万円までだと、手取り増加分は3.4万円にとどまる見通しだ。
2025年分所得からの適用は可能か
開始時期をめぐっても、主張の隔たりは大きい。 2024年末に「2025年度税制改正大綱」が決定し、2025年3月ごろに改正関連法が成立するというのが例年の税制改正の流れに沿ったスケジュールだ。 所得に対する課税は、1月からの1年間分に対して行われるので、103万円の壁の引き上げによる所得税の減税は、準備期間も念頭に「2026年1月スタート」というのが通常の流れをベースにした政府・与党の想定だ。住民税は、翌年の6月から納付するので、減税時期も1年半後の2027年6月からということになる。 注視されているのが、この流れを早められる可能性だ。会社員の場合は、2025年12月の「年末調整」、自営の人などの場合は、2026年2月~3月の「確定申告」を通じて調整を行えば、2025年の所得分から、壁の引き上げによる減税を受けられるのではないかというものだ。 定額減税も、最終的に年末調整や確定申告で精算する形になっているが、それと同じようなやり方をすれば、壁引き上げの前倒しができるのではというのがひとつの論拠だ。 この場合、住民税減税のスタートは2026年6月になるが、全体として、政府・与党が現在軸として想定しているスケジュールよりは1年早くなる。 国民民主党の玉木代表は「来年から実施するのが民意だと思う」と主張し、X(旧ツイッター)に「国税(所得税)に関して言えば、2025年末の年末調整や2026年2‐3月の確定申告に間に合うよう、1年前の本年12月末に決めれば対応可能だと考える」と書き込んだ。 一方、自民党税制調査会の宮沢会長は、与党と国民民主党との協議後、「かなり距離感があることがよくわかった」としたうえで、「2025年の1月1日から早々に施行したいという国民民主党の希望があるが、技術的にいくつか越えなければいけない難しい点があるという話をした」と述べている。