花王のウェブアクセシビリティ、4年で700サイトの品質基準達成をめざす“全社プロジェクト”の進め方
成功に導く秘訣は「無理をさせない」こと
ウェブアクセシビリティを改善した結果、花王のウェブサイトには、どんな変化があったのか。次は、その一例となる。
変更後は視覚的に見やすく、正確な情報を得やすくなっている。大勢の関係者を巻き込む一筋縄ではいかないプロジェクトだが、現状大きなトラブルはなく順調に進んでいるという。その理由は、「丁寧なコミュニケーション」と「無理のないスケジュール設定」にあるようだ。 ウェブアクセシビリティを進めるにあたり、後藤氏と渡邊氏が所属するマーケティングプラットフォーム部では、社内のさまざまな事業部とコミュニケーションを取り、協力体制を築いた。 ┌────────── プレスリリース発表の1年ほど前から、コーポレート部門や事業部門に加え、ESG、人事、消費者相談室、PRなど、さまざまな部署の社員に意思を伝え、協力してほしいとアプローチをしてきました。幅広い視点で情報共有ができますし、ウェブアクセシビリティの必要性の理解浸透もスムーズだったと思います(渡邊氏) └────────── こういった地道なコミュニケーションに加え、コストやスケジュールにおいても無理のないように気をつけている。主要サイトの改善は2024年中を目標にしているが、100%の達成をマストにはしていない。
┌────────── 予算と関係者の負担を最小限にするために、商品の改廃、あるいはウェブサイトのリニューアルのタイミングで、ウェブアクセシビリティの改善をお願いしています。また、目先の目標として『8割までの達成』をあげており、余白を残すようにしました(後藤氏) └──────────
全社で取り組む重要事項でありながら、柔軟性をもたせることで反発を生まずに進められているのかもしれない。それでも「ウェブサイトをリニューアルする予定がない」といった相談があった際は、マーケティングプラットフォーム部で個別に対応しているそうだ。 ◇ ◇ ◇ ウェブアクセシビリティ強化を本格的に始めて、まもなく2年となる。社内では、情報発信に対する考え方の変化が見られるという。 ┌────────── ウェブサイトだけでなく、ユニバーサルデザイン指針への意識もより増している印象があり、製品の仕様やパッケージも一段と配慮する兆しが見られています。社内外で啓蒙を続けることで、花王のみならず世の中の多くのウェブサイトが消費者にやさしい設計になっていけばと願っています(渡邊氏) └────────── 現実的な目標を定め、関係各所と連携を取りながら着実にウェブアクセシビリティ向上・確保を進めている花王。これからウェブアクセシビリティに取り組みたい企業にとって、同社の事例は参考になるはずだ。