花王のウェブアクセシビリティ、4年で700サイトの品質基準達成をめざす“全社プロジェクト”の進め方
その背景には訴訟問題もあり、アメリカではウェブアクセシビリティに関する訴訟が増加している。同国には障害を持つ人がアメリカ社会に完全に参加できることを保証したADA(Americans with Disabilities Act 障害を持つアメリカ人法)という法律があり、ADAに基づくウェブアクセシビリティ提訴の件数が2017年の814件から2018年には2,285件と281%増になっている。
そうした国と比較すると日本の対応は遅れ気味だが、重要事項として取り組む企業も出てきている。また、コロナ禍の都道府県知事による記者会見に手話通訳が付くなど、世の中の情報への意識が変化している感覚もあったという。 ┌────────── そういった背景に加え、日本市場に目を向けると人口減と高齢化が顕著に進むと共に、海外から移り住む人が増えています。縮小、かつ多様化する市場で売上を維持するには、より多くの方に伝わる形で情報を届けることが求められます。 これらを踏まえ、デジタル化が急速に進む今のタイミングで、ウェブアクセシビリティの向上・確保に着手すべきだと考えました(渡邊氏) └──────────
約700サイト、大規模プロジェクトのプロセスは?
グローバルのウェブサイトも含めると、対応すべきサイト数は全700ほど、関係者は約1200名にのぼる。この大規模プロジェクトを、次のプロセスで進行している。 2020年 |WCAG2.1レベルAAを評価基準としたアクセシビリティ診断の実施、現状課題の把握 2021年12月 |全社でウェブアクセシビリティに取り組む意志をプレスリリースで発表 2022年3月 |具体的な方針を確定し、発表 2022年4月~ |社内教育をスタート、ウェブアクセシビリティの説明会を開催 ■ [プロセス1] 現状の課題の把握 まず自社のウェブサイトをいくつか診断したところ、30%はCMSが生成するhtmlが、残りの70%はコンテンツが原因で、基準とするウェブアクセシビリティが確保できていないことが判明した。