城氏が敗因分析「なぜ森保Jの守備は完全崩壊したのか」
序盤から飛ばしてきたベネズエラのディフェンスの裏にはスペースができていた。その裏へ鈴木武蔵が抜け出し、中島がタイミングを合わせてボールを出すのだが、浅野がサポートにいけていないケースが目立った。もし南野ならば、鈴木にボールが出た瞬間にサポートして連携を作る。だが、この試合で鈴木と浅野の2人に阿吽の呼吸はなかった。後半1点は返したが「組織的に何かをやろう」とする意識に欠けていたのである。 浅野が下がってくる場面が、しばしばあって、必然、中島にも自由に動くスペースがなくなり、鈴木も前線で張っているだけの孤立する時間が増えた。 加えて柴崎、原口ら欧州組のコンディションの悪さも手伝った。ここまで積み上げてきたチームの攻撃ベースを変えないため、それを知る柴崎、原口、中島らは、敵地で行われたW杯アジア二次予選のキルギス戦後に日本へ帯同することになったのだろうが、疲労からかミスが多く、柴崎などは体が動かずピッチ上から消えてしまっていた。 森保ジャパンのレギュラー組は、試合ごとに成熟して進化が見られる。だが、W杯アジア予選という長い戦いの中では、今後、主力メンバーの故障離脱など、いろんなことが起きる。実際、大迫も戦線離脱した時期があった。そのためにもチームの底上げは必須であり、新しい戦力、それぞれのレギュラーのポジションの代役、或いは代役以上の活躍のできる選手が出てこなければ苦しくなるし、チームは活性化しない。 この試合の狙いは、そこにあったのだろうが、新戦力は見つけられずレギュラー組と予備軍の格差の大きさを突きつけられたのである。 試合後、パナソニックスタジアム吹田は、大ブーイングに包まれたという。この試合の全体のコンセプトが見えにくかったのだから期待したサポーターが不満の声を漏らすのも無理はない。 そもそも森保監督は、試合前にもっとハッキリと、この試合のコンセプトを打ち出して良かったのではないか。新しい選手を発掘する試合であり、経験値のない選手に世界のレベルを体験させる試合であったことを明確に打ち出しておけば、この先に待ち受ける厳しい戦いに向け収穫は少なかったが、意義ある敗戦であったことも理解してもらえたのではないだろうか。 (文責・城彰二/元日本代表FW)